シャチ状球体

永遠の散歩のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

永遠の散歩(2019年製作の映画)
3.6
一応腕自体に時計が浮き出るガジェットが登場するSFなのに、人々の生活は今よりもきっと貧しい。
技術が進歩しても社会設計が変わらなければ生活水準は向上しないのだ。SFホラーというジャンルだけ見て想像する世界とはかなり異なる土着的な設定で、孤独な老人が関係している事件と老人が幼少期に出会った霊の話が交互に展開されていく。

ラオスというあまり馴染みのない国、しかも農村地帯が舞台の地味な過去改変物語なので睡魔に襲われそうになるけど、死者に対する姿勢が誠実なのと、過去に戻って母親を救う当初の目的が段々と脇に逸れていくという予定調和ではない部分が丁寧に作られており、生と死の境界線をここまで明確に映像として表現できた映画はあまりないと思う。
想像の6倍くらいは絵面が地味ということを念頭に置いて観れば、人の一生と死生観について自ずと考えさせられる良質な講義を体験したような読後感が味わえる。
シャチ状球体

シャチ状球体