旅するランナー

夏時間の旅するランナーのレビュー・感想・評価

夏時間(2019年製作の映画)
3.8
【お姉ちゃんの夏時間】

とても静かな映画。
夏休みの昼下がりにウトウトまどろみに誘われるような。

大人たちの老いや思い出なんかも織り込まれてますけど、中心は思春期の少女の視点です。
いろいろ悩んじゃうし、
大人は何も分かっちゃくれないし、
弟は(時々可愛いけど)アホガキだし、
何だかうまくいかないし...
表面上淡々としていた彼女が、ラストに表出する感情は、積もり積もった喜怒哀楽が入り混じった複雑なものなんだろうか。

映画の中で何度か流れる「未練」という歌謡曲。
歌手違いの3バージョンが流れます。
これが、なかなかイイ曲なんです。
特に、ひとりソファーに座りながらニンマリと笑みを浮かべて聴く祖父と、見ちゃいけないものを見ちゃった感じで階段を引き返す少女のシーンは、深い味わいが滲み出ます。
監督のセンスの良さを感じます。

思春期の女の子の心の中は、僕には全く理解できません。
でも、そこを繊細な演出で見せてくれます。
弟がいるお姉ちゃんの心にきっと響くんでしょうね。