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ヴィタリナのmotoのレビュー・感想・評価

ヴィタリナ(2019年製作の映画)
3.9
肌が美しい。彼らの肌はあらゆる光を現象させることができ、光の「庭」あるいは「カンヴァス」となっているのではないかと感じた。

序盤。人々がカメラの前を次々と横切っていくシーンはまさに幽霊・亡霊そのものであった。彼らはシルエットとしても存在することができる。
かと思えば確かに鋭い眼光を飛ばすことがある。決してシルエットなどではないのだ。

光の角度によってヴィタリナが放つ表情は異なる。彫刻であるとき。不安を訴えるとき。心の中に込み上げる怒りが表情として発露してしまったとき。

それと同時に影と光の攻防はカメラのフレーミングにも及んでいた。カメラの画角というフレームだけではなく、影がもう一段階の画面の切り取りを行なっていたように感じる。それは「切る」という線的な操作のような明確な輪郭はない。影によって連続性は「断ち切られ」、空間の接続関係は曖昧なものとなる。ここでも、決して空間は文字通りの「切断」が起きたわけではなく、もやの中に消えていくような感覚に近い。だから明確な空間の不連続的な関係というよりは、まだどこかで「接続」されているのではないか?という妙なアンビバレントな状態として受け取られる。

幽霊は輪郭を持たない。記憶も輪郭を持たない。影も輪郭を持たない。
この面においては、無輪郭であることがこの映画のあらゆる性質と一致を果たしているといえよう。
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