Yuto

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のYutoのレビュー・感想・評価

3.7
夢幻の罠に嵌まれども

熱き心は欺けぬ

炎の刃で鬼を斬る

それが「強き者」の使命なれば


人の誇りにかけて、邪悪な敵に立ち向かう〈鬼殺隊〉の物語。



原作コミック未読、TVアニメ未視聴のド素人が流行りに便乗したと言えば聞こえは悪いですが、素人の私でも楽しめる内容でした。
しかし鬼滅の刃のファンではなく、あくまで映画ファンの端くれとしての視点と評価です。良かった点もありますが気になった点もありました。ネタバレしない程度にそれについて記述していきたいと思います。あくまで個人的な評価なので悪しからず。


〈良かった点〉
・既に多くの方が評価しているよう、アニメーションは素晴らしかったです。
本作は主にオーソドックスなセル画アニメーションですが3DCGも多様しており、その使い分けもうまかったです。
キャラクターの属性によって水や炎のエフェクトが戦闘シーンを彩りますが、一見CGの方が良さそうなものをあえてセル画で表現することで本作の独特な世界観を見事に象徴していました。
ケレン味溢れる演出やカメラワークもアニメならではと言ったところでしょう。

・ストーリーのテンポは良かったです。
主人公のバックボーンも描いており、素人でも世界観はだいたい理解できると思います。
欲を言えば〈鬼〉や〈鬼殺隊〉など設定に関する概要のテロップが冒頭にあれば非常に助かります(笑)。

・ナイスガイ、煉獄!


〈気になった点〉
・劇中で急にキャラクターデザインがユルくなるギャグシーンが何度もありましたが、あまりその必要性は感じないです。
この辺は鬼滅に限った話ではありませんが、演出には一貫性を持たせた方が映画としてのクオリティは上がると個人的には思っています。
それは本作みたいにテーマがしっかりした映画なら尚更です。なのでギャグシーンはあまり好きになれなかったです。

・戦闘シーンの音響編集が所々かなり微妙でした。
具体的には、技を繰り出す効果音とかとキャラクターのセリフが被ってごちゃごちゃしてしまっています。何を言っているのかよく聞き取れないシーンが何度かありました。
セリフの重要度を考慮し取捨選択した上で音響を調整していれば良くなっていたと思います。

・これは完全に素人としての感想ですが、映画の後半で見たこともない敵キャラクターが突然登場しますが、ちょっといきなり過ぎて混乱しました。
これに関しては劇中にそれを匂わせる伏線は貼るべきかと思います。


〈総評〉
コロナ禍の中、原作ありきのアニメ映画がなぜこれほど大ヒットしたのか。その理由が気になり劇場で鑑賞しました。

テーマがはっきりしており、それをアニメならではのケレン味溢れる演出で具現化し、鬼との戦いを通して人としての在り方・生き方を再認識できる。そんな印象でした。

居心地のいい夢に逃避せず、現実を見つめ立ち向かう。そんな彼ら〈鬼殺隊〉は、今の時代の子供たちにとってヒーローでない訳がありません。そして大人も例外ではありません。自分の力を傲ることなく仲間を引っ張るその姿勢。煉獄杏寿郎というキャラクターは、月並みな表現ですがまさに「大人」の模範であり〈柱〉です。

個性豊かなキャラクターたちが誇りを胸に刃を振る『鬼滅の刃』。この作品が多くの人を魅せるものも頷けます。
Yuto

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