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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のmorimotoseiichiのネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

 映画なのでテレビアニメに比べると絵がきれい。テレビアニメとは比べものにならないぐらいお金がかかってるなという感じ。よくもまあこんだけお金をかけて(どんだけお金がかかってるのか実際のところは知らないけど)こんな映画を作ったなと。

 大人でも泣けるというので期待していたのだけど、朝日新聞デジタル「煉獄さんの自己犠牲はなぜ崇高か 滅私を超えた鬼滅の力」(https://www.asahi.com/articles/ASND62HFKND4UPQJ00C.html)みたいな見出しだけでネタバレする記事が目についたせいで観る前から煉獄が死ぬんだろうなということが頭から離れず、まったく泣けないし、観ていて終始しらけた感じだった。まあ、こういう記事を目にしなかったからといって泣けていたかどうかはわからないし、期待が高すぎたというのがあるかもしれないけど。それでもあんな見出しの記事を書く記者やその記事をよしとするデスクはどうなっているのかと、ほんと怒りを覚える。

 テレビアニメ以上に説明的な台詞が多かったのにもげんなり。子ども向けのものだとしても、これを観て育つ子どものことを考えると微妙で、じっさい、原作者や脚本家もすでにこういうのを観て育ってきた世代なのかもしれないなと。誰もいない列車の上で鬼がぶつぶつ独り言を言いながら自分の血鬼術について解説してくれたり、首をはねられた鬼が死なない理由や自分の弱点になるようなことをべらべら話したり、観ている人は気にならないのかなあと。もうこういうジャンルなのかもしれないけど、こういう作品ばかりで「日本のアニメはレベルが高いのに、なんで世界の映画祭で賞がとれないのか」みたいなことを言われても、なんだかなあと。

 敵をやっつけたと思ったらすでにそれは敵の術中で眠らされていたというのは、同じ週刊少年ジャンプで連載されていた『ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン』、前後関係はわからないけど、確か『NARUTO ナルト-』でもあったはず。夢の中に入り込んで攻撃するというのも古典的で定番中の定番だし、夢と現実の区別がつかなくなって現実でも夢と思い込んで自らの首をはねようとするのは、最近で言えばクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』の二番煎じで、テレビアニメと同じく観ていて新鮮さや驚きがない。

 物語そのものはすごく単調で、敵をやっつけたと思ったら(眠らされていて夢の中でのできごとで)倒せていない。なぜ死なないのか敵が丁寧に説明してくれる。現実の世界で今度こそ敵をやっつけたと思ったら、今度はまた別の理由で倒せていない。そしてまたなぜ死なないのかを敵が丁寧に説明してくれる、といった具合。あるいは、必殺技を繰り出すが敵にはぜんぜん通用しない。強烈な反撃を受けるけどこちらも死なず、さらに強力な必殺技を繰り出すが(なぜ最初からそれを出さない⁉︎)やはり敵には全く通用せず、再び強烈な反撃をくらって最後は捨て身の必殺技を使い、いくらか敵にダメージを与えるけど、といったやりとりが延々と続く感じ。

 映画向けに脚本も考えられているのだろうけど、基本的には原作の漫画の第7、8巻を映像にしたもののようで内容的には締まりがなく、〈映画〉というよりはテレビアニメの続きの豪華版との印象が否めない。映画としてやるならば、初めから映画向けに書かれた脚本でやってほしいなというのが正直なところ。

 内容的にはどうなんだろう。幅広い年代、性別の大人から劇場版を観てよかったという感想を聞いたのだけど、私はぜんぜんだった。戦闘の場面はそもそもあまり興味をそそらない上に単調だったし、家族の絆みたいな話は安っぽさが否めない。鬼殺隊同士の友情とか仲間意識とか出会いと別れみたいなものも鬼に協力する人間たちの動機も背景の説明に奥行きがない。やっぱり何がそんなによいのかわからないなと。

 まあそれでも一定の評価を受けているんだし、どんなものなのか、観ることができてよかったかなと。