HAYATO

ブータン 山の教室のHAYATOのレビュー・感想・評価

ブータン 山の教室(2019年製作の映画)
4.2
2024年277本目
秘境の村での伝統的な暮らし
標高4800メートルの高地にある実在の村・ルナナを舞台に、都会から来た若い教師と村の子どもたちの交流を描いたブータン映画
ミュージシャンを夢見る教師・ウゲンは、ブータンで最も僻地にあるルナナ村の学校へ赴任するよう言い渡される。1週間以上かけてたどり着いた村には、「勉強したい」と先生の到着を心待ちにする子どもたちがいた。電気もトイレットペーパーもない土地での生活に戸惑うウゲンだったが、純粋な子供たちや壮大な自然に触れ、自分の居場所を見いだしていく。
パオ・チョニン・ドルジ監督が長編デビューを飾り、第94回アカデミーでブータン映画史上初となる国際長編映画賞ノミネートを果たした。多くのキャストが映画初出演であり、実際にルナナで暮らす人々も登場する。こういう映画にしては珍しく日本語吹替版もあり。
秘境・ルナナの自然とそこに暮らす人々をとらえた感動的な作品。独自の文化や伝統を守りながら暮らすルナナの人々と交流し、現代社会とのギャップに直面するウゲンの姿を通じて、「本当の豊かさとは何か」という問いを観客に投げかける。
物語の中心は、都会の生活に憧れながらもルナナの学校に赴任した教師・ウゲンが、子どもたちとの出会いや自然との触れ合いを通じて自身の価値観を見つめ直す成長過程。彼が直面する電気も携帯もない過酷な環境は、物質的な豊かさに慣れた現代人にとって驚きの連続だが、村の人々が見せる純粋さと心の強さが「何が本当に大切なのか」を考えさせてくれる。
特に印象的なのは、ブータンの伝統歌「ヤクに捧げる歌」が流れるシーン。この歌は単なる音楽以上に、ブータンの文化や仏教の教え、自然への感謝が詰まっており、映画全体のテーマを象徴している。また、現実の村の人々がそのまま登場することで、ドキュメンタリー的なリアリティも感じられる。
美しい自然の映像とともに描かれる本作は、グローバル化が進む現代社会において忘れてしまいがちな「本当の豊かさ」を再確認させてくれる。物質的な豊かさを超えた、人間としての豊かさを見つめ直すきっかけになった。
HAYATO

HAYATO