yasu96

今日もどこかで馬は生まれるのyasu96のネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

引退馬に焦点を当てた作品。
この作品を観るまで(正確にはこの作品の存在を知るまで)競走馬は亡くなるまで何処かの牧場で丁重に扱われているのだろうと考えていた。

2015年度JRAの年間売上額は約2兆6千億円。巨大な競馬産業の中で毎年産み落とされる競走馬は約7,000頭。しかし、寿命を全う出来る競走馬はごく僅か。

JRAの競走馬を引退後、繁殖馬に成れない馬は地方競馬、乗馬、ホースセラピー用の馬としてセカンドキャリアを歩む。行き場の無い馬は食肉となる。そのセカンドキャリアにも必ず終わりは来る。

食肉センターのシーンでは馬の屠殺の詳細な手順が説明される。大ベテランの職員ですら馬の目を見てしまうと屠殺に戸惑いが出てしまうので馬に目隠しをすると語っていた。

屠殺や安楽死を逃れた馬を預かる養老牧場で飼育するには最低でも月額8万円掛る。
馬の平均寿命は20年以上。

過酷な現状が次々と映し出されるが作品全体としては希望を宿している。現状を変えていこうとする競馬関係者(生産者・調教師・騎手・馬主)。人を乗せることが出来なくなった馬に経済的価値を持たせる事に挑戦している農業経営者。人間が競走馬に背負わせた過酷な現状と向き合う人々の姿に心が動かされた。非常に良質なドキュメンタリー。

上映終了後、監督とプロデューサーによるトークイベントが開催された。
監督はこの作品を引退馬支援のムーヴメント創出の端緒としたいと語っていた。作品全体が非常にフェアに作られていると感じたのはこの為だったのかと腑に落ちた。https://creempan.jp/uma-umareru/index.html
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