johann

戦争と女の顔のjohannのレビュー・感想・評価

戦争と女の顔(2019年製作の映画)
3.2
個人的に反出生主義に近い考えを持っているのですが(他者の命に対して責任を負うことは不可能であるという論理)、その視座から観るとあまりに堪え難いエゴイズムにあてられます。ただこの時期のレニングラードの倫理感の時代的限界と戦後の極限状態を今映画化する意義を鑑みると、「耐え難い」という感想はそれなりに芯を食ったものになるのかも知れません。

それにしても、出てくる人間全員屈折(それも好きになれない歪み方)をしていて、特にねずみ顔の彼なんかは出てくる度に苛立ちを禁じ得ませんでした、無自覚的既得権益/暴力性の邪悪さたるや!ああいう輩がいたからマルクスの共産主義が達成出来なかったんじゃないかとすら思います。

数ヶ月前かかっていた「親愛ある同志たちへ」もそうですが、いま露映画(それもソ連を舞台にした)を観る時間は本当に重要だと思います。為政者と市井の人々とのイデオロギーの屈折を捉える意味において。
johann

johann