紅孔雀

聖なる犯罪者の紅孔雀のレビュー・感想・評価

聖なる犯罪者(2019年製作の映画)
4.8
深く心に突き刺さるポーランド映画の傑作。
少年院仮出所の青年が司祭を装い、ミサを執り行う。村人に慕われながらもいつ正体がバレるかを恐れ、その強烈なサスペンスで途中から眼を離せなくなります。それも実話に基づく話だというんだから、説得力も半端ない。青が基調の画面も、静謐な本作に相応しいと思いました。
数々の映画賞に輝き、アカデミー外国映画賞にもノミネート。ポーランドからは前年の『COLD WAR あの歌、2つの心』に続き2年連続の快挙でした。
主演は当時弱冠28歳のバルトシュ・ビィエレニア。子役時代『星の王子様』を演じたのも納得の、澄んだ眼差しが印象的です。その繊細な演技が、本作成功の大きな要因のひとつであったことは間違いありません。
ここで彼の発する印象的なセリフを2つ。
「沈黙もまた祈りです」(説教を思いつかず苦し紛れに発した一言だが、信徒達には導きの言葉となる)
そして
「赦しとは愛です」(交通事故を惹き起こした男性を赦せ、と彼を憎む村人達に説く。本作のテーマに繋がる重いフレーズでした)
さらに特筆すべきはエンディングの見事さ。一瞬、置いてきぼりを食う感じですが、同時に深い余韻も残します。今まで観た中でもベスト級の終わり方でした。
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