takanoひねもすのたり

聖なる犯罪者のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

聖なる犯罪者(2019年製作の映画)
3.5
神父(司祭)になることを希望し、しかし犯罪歴があるため叶わず、仮出所後ある町の製材所で働くため赴いたものの、町の教会に引き寄せられ、住人についた嘘を引っ込めることが出来なくなり、コスプレ神父(司祭)を務めるとこになる話(間違いではない)

殺人の罪で矯正施設に入所していた19歳のダニエル。信仰に目覚め敬虔な信者になり神学校へ入学することを望むも前科があるため叶わず。
若者達6名と対向車のドライバーが無くなった事故の影を落とす小さな町。
彼はその町の教会で、偽神父(司祭)として存在すること(=誰かを救済すること)に陶酔感や万能感や善行を行い導くことに溺れてゆく。

彼の心の内に町の人を救いたい気持ちはあり、それは偽りではなかったと思う。
でもミサの進行や説教はGoogleで調べられても、劇中に突然呼ばれる死にゆく人へ与える安寧と赦しは彼には出来ない。
『塗油の秘跡』『聖体拝領、臨終の祈り』
老人は秘跡を与えられないまま亡くなり。

あの場面を見た時、偽神父を止めるタイミングだったのにと彼に苛立ちを覚える。
コスプレ神父の行いは傲りだと気がつかない……のは何でだ。

事故以来悲しみで停滞し、分断していた町の人達の気持ちを動かし良い影響を残したことは善行だったと言えるかも知れないけれど、個人的には複雑。
トマス神父(矯正施設に訪問していた神父)が激怒したのも当たり前だと思う。

コスプレ神父に加速させた理由に衣装もあるんじゃないかなと思う。
カソリックの神父がまとうカソック(コートみたいなもの)あれ美しいもん。
自分が罪を赦され清く尊い存在になったような高揚感あったんじゃないかなあ。

祭壇を背に上半身を現にした時、背中には聖母マリアのタトゥー、キリストが磔刑されている姿のごとく両腕を開き去ってゆくダニエル。
やっぱりどこか神とこの身は同じ……と思い上がっていたのではないかと思った。

結末は是々非々あり解釈が分かれそう。

冒頭に実話に基づくとあり、ダニエルのキャラクターのモデルになった人はいるそうですが、彼のケースだけを取り入れた訳でなく、ポーランドで度々起こる偽神父事件と、大勢が亡くなったある事故、その事故のため分断し諍い中のある町の出来事を混ぜ込み組み合わせて脚本を書いたようで……実話……?
実話とは……。

ダニエルくん「出所したら薬と酒はやるな」と忠告されたのに即全部をヤりに行ってて笑った。
瞳孔かっぴらいたパキってる表情が迫真。
それにしてもボカシが余計だった。
あれもう少し技術で何とかなんないのかな。

もし今度があれば、真面目に働き、信心深い信者に、神父でなくとも善行や赦し愛すことはできると思うよ。ダニエル。