おーもり

ドロステのはてで僕らのおーもりのレビュー・感想・評価

ドロステのはてで僕ら(2019年製作の映画)
3.5
少し不思議な、コンパクトなドラマ。
演技や行動がすごくマンガっぽいというか、フィクションぽいのはご愛嬌。
2つのモニターを駆使して、時間のおかしな繋がりが織りなすへんてこなドラマを練り上げた脚本が素晴らしい。
たった2分間だけ、過去と未来がつながるという遠すぎず、近すぎない時間的距離感が秀逸。
この仕組のルールをきっちり観客に理解してもらう様に、過去側から見た視点で始め、2分後に未来側からの視点で繰りかえす丁寧さ。
繰り返しで間延びしそうな気もするが、頭を整理しながらみれるので観客に優しい。
じゃこのモニター向かい合わせにしてやろう!という思考実験的な発想。
ここまで基本編をしっかりしてきたから出来る応用編で生み出されたドロステレビ(この命名がまた藤子F作品っぽくて良い)。
おもしれー。綿密なタイムラインを何十にも書いて考えられたのであろう2×N分を隔てた世界達。
幕をかけることで絡み合いすぎないように配慮している所も考えられてるぅ。

「未来に引っ張られているじゃん!」という、観客側も薄々思いはじめていた頃に、劇中で言及されるのも気持ちいい。
そしてそれが最後のオチにもつながる。
未来は自分たちで作っていくんだ。といくのだという至極まっとうなメッセージ。
わちゃわちゃ時間のトリックを面白おかしく盛り上げた小物が文字通り回収されていく様もスマート。

ラストの2人の会話から、今作のつくり手が何が好きで、どんな物語を作りたかったのか伝わってきた。
こういう心意気の映画は好きになっちゃう。