花火

辰巳の花火のネタバレレビュー・内容・結末

辰巳(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

まず音が良い。前作『ケンとカズ』は音響が厳しいところもあって勿体なかったのだが、今回はリレコなどの役職の人が入っていることによって、しっかりとクリアな音に仕上がっている。それは単に技術的な達成だけでなく、そのことによって俳優たちの怒号・罵声がまるで音楽であるかのように感じるまで昇華されているのが素晴らしい。そして顔。度重なる寄りの画は決して意味に回収されず、物質としての強度を維持している。吐く人(喧嘩を売るガム/唾→人を殺した痛みとしてのゲロ)として設定される森田想の、殴られて車の外装に落ちた自分の血から、復讐相手を刺して滴り落ちる他人の血へ、それがほんの僅かにだけアップになってハッとさせられる。それにしても森田想が松本亮に復讐する螺旋スロープの立体駐車場(小雨で濡れたアスファルトの艶!)といい、小銃を手にしてから車で突っ切る道の中央アジアみたいな風景といい、ロケーションがべらぼうに良い。正直、遠藤雄弥が本格的に手を貸す辺りから、それまでの張り詰めた空気が若干弛んだのではと思うものの、ここまでやりきったなら健闘以上でしょう。
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