ショーヤ

辰巳のショーヤのレビュー・感想・評価

辰巳(2023年製作の映画)
3.7
暴力を振るえる人が羨ましくなるときがある。もちろん暴力は最悪だけど、特に男性社会に生きていたわたしからすると、自分には「基礎教養としての暴力性」のようなものがあまりに足りていないように思えた。
小学校の高学年になると、低学年のころは仲の良かったTくんが、毎日集団登校のときに背中を小突いてくるようになった。わたしはそれが嫌だった。当時は『コロコロコミック』か何かでプロレス要素のある漫画が流行っていたので、次第にTくんは休み時間にプロレス技をきめてくるようになった。自分は死ぬほどコケにされていたけれど、当時はただヘラヘラしていることしかできなかった。
中学に上がり、Tくんは別の地域に引っ越した。格闘技を習っていたわたしは、Mくんの腕を小突くようになった。Mくんも格闘技を習っていて、軽く投げ技をかけられたことがある。しかしそれは嫌じゃなかった。中学校は一気に知らない同級生が増えるし、自分の周りにいた男子も舐められないように暴力的に振る舞っていた。それに当時は「肩パン」が流行っていた。だけど今にして思うと、僕がMくんの腕を小突いたとき、彼は少し悲しげな顔をしていたように思う。

冒頭にクレジットが、昔の日本映画みたいに出てきた瞬間から、この映画のヤバさを感じ取っていた。やっぱり『辰巳』は最高で、ピーター・ガブリエルのファーストみたいなクルマはかっこいい。いや、この映画に出てくるクルマはどれも最高にかっこよく撮られている。
踊ってばかりの国・下津みたいな顔面の遠藤雄弥は目で演技する。森田想は口元で演技した。竜二役の倉本朋幸は本作が映画初出演なのか。わたしはよく暴漢に追いかけられる夢を見るので、竜二がクルマの窓をバンバン叩く場面が怖くて仕方なかったぜ。
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