シミステツ

ようこそ映画音響の世界へのシミステツのレビュー・感想・評価

ようこそ映画音響の世界へ(2019年製作の映画)
4.3
人が生まれてはじめて感じるのは音。
世界のはじまり。

普段何気なく映画を見てたけど音響の大切さや有り難みを知ったし、目から鱗の驚きな情報も多くて普通に勉強になった。音響はまさに「才能の輪」、スタッフの努力の輪で出来ている。

「錯覚のアート」というようにまさに音響が感情を大きく左右するし、画面外の状況を音で伝えるという「音で物語を助ける」側面もある。

『プライベート・ライアン』ではカオスの中にリズムを作ることを意識して、音楽がないこともリアリティを増幅する助けになるという。

「映画における音楽は救命ボートに似ている」


エジソンからはじまる音の世界。
エジソンは映像と音の同期を夢見ていたという。
トーキー映画以前は舞台で音作りがなされていた。1926年『ドン・ファン』で音声トラックが作られて、1927年に『ジャズ・シンガー』でトーキー映画の誕生。ハリウッドも変化していき、防音のスタジオが必要になり雑音は追い出される。マイクの性能に限界があるので制約が多かった。このへんの話は『バビロン』に通じる。
音声から効果音へ。音響編集という考え方が登場し必要な音を足すという流れに。先駆けは1933年の『キング・コング』。音響デザイナーのマーレイ・スピヴァック。トラの声は逆再生にしたり怪獣の異様な声を効果的に生み出す。
1930〜60年代は音が主役に。

フランスの具体音楽など様々な手法や試みが登場する。ジョン・ケージが『ゴッド・ファーザー』に影響しているのは興味深い。

1950年代からLPがステレオになった革新。ビートルズの『リボルバー』、『レボリューション9』

1975年ロバート・アルトマン監督『ナッシュビル』同録ミキサーのジム・ウェッブはマルチ・トラックを採用。音が織りなすタペストリーが物語を誘導していく。

『スター・ウォーズ』のウーキー族の声はいろいろな動物から録音した音で撮影がはじまる1年前から着手していたというのも驚き。言葉は音の表情であり抑揚。R2-D2の音作り。観客が音のカッコよさに気づいたのが1977年の『スター・ウォーズ』でまさに革命だという。

『地獄の黙示録』ランディ・トム、『ジュラシックパーク』の恐竜の声を作り上げたのはゲイリー・ライドストロム。

ダイアログ編集の地味だけど意識を向ける大事さもいぶし銀。ADRという聞こえづらい音声をスタジオでアフレコするのも目立たないしあまり知らなかった。群衆の声とか、泣き声、走り去る足音…。

『トップガン』のジェット機の音は実際は意外と退屈だからライオンやトラなど動物の声も足しているというの凄すぎる。

『ROMA/ローマ』ではカメラのパンに合わせて音が動くパンニング手法を採用。

水野晴郎じゃないけど、いやあ、映画って本当いいもんですね〜となった。