もりゆうき

ようこそ映画音響の世界へのもりゆうきのレビュー・感想・評価

ようこそ映画音響の世界へ(2019年製作の映画)
4.4
【それでも音を求めた】

『みんなそれぞれが本気をぶつけた結果、一つに集束していく』そんな話にめっぽう弱い。
そんな話だったか?と言われるかもしれないけれど、例に漏れず感情が溢れかけた。

映画体験の半分は音である、ということは、至極当然なことなのに、言われるまで気付かなかったかもしれない。
アヴェンジャーズの集結シーンを思い出せば必ずあの音楽が頭に流れるし、スターウォーズといえばビームやライトセーバーの音が思い浮かぶし、R2-D2が発するのはただの機械音なのに絶対に喋っている確証がある。

でも、無声映画が当たり前だった頃に、映画音響なんて見向きもされなかった時代があったなんて、今では考えられない。
もし彼らが誰か一人でもいなかったなら、これほどに映画が心に残ることもなかったかもしれない。
そして、最近いつもワクワク・感動させられる現代のアニメなんてのも、生まれていなかったかもしれない。

映画に出てくる彼らは、別に何か使命感を持って音を作ってたわけじゃなくて、きっと自分の最高の映画を考えたときに、目の前に音があったんだろうな。
世間がどうかなんて関係なくて、彼らはただ目の前で最高を突き詰めて、それが今の映画を作っている。
最後にかけてのそんな集束で胸が熱くなったりした。

あ、パンフレットは、映画で言ってたことそのまま書いてあるだけなんで、感謝の意味でお布施払いたい人以外は買わなくていいと思います。


P.S.
日本には落語や講談という、声で心を動かさせる芸能が昔からある。
歌舞伎では、太鼓で雨音を表現したりもする。
ある俳人は、水の音を短文で味わったりした。
なんだかそれを思うと、僕らの文化は昔から、音というもの、特に、世の中にある音というものを僕らならではの見方で表現していたんだろう。
そして、邦画の音がなんとなく心地よかったり、声の表現というものに尋常じゃないこだわりがあったりというところは、僕たちが日本人だからなんだろうな、とふと思った。
もりゆうき

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