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グンダーマン 優しき裏切り者の歌のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

実在したミュージシャン、ゲアハルト・グンダーマンを描いた伝記映画。

主人公はなんとも冴えない風貌のミュージシャン。
そんな彼がシュタージ(秘密警察)のスパイになり、その事実が20年後に明らかにされてしまう…というのが主な粗筋。

「ミュージシャンがスパイになる」という話には興味をそそられるが、彼がスパイとして活躍する場面はほとんど登場せず。
それよりも、グンダーマンの苦悩や恋愛を含めた人物像、彼の音楽を紹介する事に注力している。

序盤こそグンダーマンのとぼけたキャラクターに共感を抱けたものの、後半になってくると、彼の嫌な一面が次々と露呈していく事に。
家事や育児を妻に押し付けてるのも嫌だったし、スパイだった過去と向き合わず、煮え切らない態度にもイライラさせられた。
最終的にはファンの前で告白するのだが、良い感じの歌によって、彼の反省や贖罪が蔑ろにされるのもモヤモヤを覚える。

結局のところ、グンダーマンが自分の罪と向き合っていない…そもそも、彼の罪が何なのか具体的に提示されない事が、本作の問題ではないだろうか。
「3人の犠牲が出た」という台詞があるが、彼の報告によって犠牲になった人達のディティールが分からないから、グンダーマンの罪も、彼の抱える葛藤も伝わらないのである。
東西ドイツの体制に翻弄された男の数奇な人生は興味深いものの、ヒューマンドラマとしては物足りなさを覚える作品だった。
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