さすらいの旅人

涼宮ハルヒの消失のさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

涼宮ハルヒの消失(2010年製作の映画)
4.0
前代未聞の主役を消し去るシナリオが秀逸なアニメ。
【VOD/Amazon Prime/配信視聴】

これは面白かった。
原作未読でアニメも未見のままの鑑賞。
上映時間163分は最初観るのには勇気が必要な時間だ。私としては、テレビアニメを見る安易な思いで、3回から4回ぐらいに分けて観ようかと甘く考えていた。
しかし、観始めたら内容の面白に圧倒され一気に見てしまった。
作品自体は京都アニメーション(京アニ)の代表作と言うのは知っていたが、こんなに中身の濃いSFファンタジー作品とは思わなかった。

ストーリーは主人公の高校生キョンの部活を通しての日常風景から始まる。そしてある日、今までとは一部異なる非日常世界に入り込んだ事に気づくことからスタートする。
その異なるところは、このドラマシリーズの主役である部活のリーダー格である涼宮ハルヒが、クラスのみんなの記憶から消し去られ、別の人物が違和感なく存在していること。また、主人公を全く知らないと言う親しい部活の人物が登場したりと、不合理な世界に変革させられていたのだ。この看板キャラの涼宮ハルヒが消滅したシナリオが秀逸。

この別のパラレルワールド的世界になったのは、「誰が、何の目的のためか」を解明するのがこの映画のテーマだ。そして、消し去られた涼宮ハルヒの捜索を含めて、この物語は時空を超えた想像を絶する展開をする。このスリリングで童心を呼び起こす内容は近年のアニメ、いや映画でも少ないと思う。裏話ではあるが、アニメの巨匠である細田守が本作品を監督したかった(断られたらしいが…)と言う気持ちがわかる。

本作は京アニらしいハイクオリティーなアニメを堪能できる作品でもある。実在する街や建物、夕焼けなどの緻密風景描写は他のスタジオにはない特色だ。
私の京アニとの本格的出会いは「劇場版 響け!ユーフォニアム 3部作」からだ。精密な管楽器の動き、演奏する女子高生の髪の動きやスカートの揺れなどはリアル過ぎてビックリした。ジブリに匹敵するアニメに対する信念というか自信を感じさせた。