akrutm

カサブランカのakrutmのレビュー・感想・評価

カサブランカ(1942年製作の映画)
3.8
言わずと知れた名作中の名作。仏領モロッコの中心都市カサブランカにおける、女性イルザをめぐる元恋人リックと夫ラズロの恋物語。今回、本当にはじめて見たが、確かにリックが経営する酒場でのシーンとか、サムのピアノや歌のシーンなどは、とてもお洒落である(特にその当時はお洒落だったと思う)が、リックとイルザの恋に関してはそれほど強く印象に残らない。イングリッド・バーグマンは確かに美しいけど、演技自体は大したことはない。ハンフリー・ボガートにしても、やや演技が単調。(でもそれがリック役に合っているのかもしれない。)「君の瞳に乾杯」などの名台詞もかなり唐突に出てきて、なぜそこでその言葉なのと思うこともあった。

さらに、第二次世界大戦中のプロパガンダ映画という側面を見逃してはいけない。このことで、米国では映画そのものの出来以上に評価されていると言っても過言ではない。当時のヨーロッパではドイツの勢いが増していて、連合国は劣勢であった(だからこそ、多くの人がカサブランカ、リスボンを経由して米国に避難しようとしているのである)。米国自身も太平洋戦争で劣勢であり、本作のようなプロパガンダ映画を通じて国民の戦意を高揚させる必要があった。したがってプロパガンダ映画としての重要さを後世に伝えていくためにも、必要以上に高い評価を与えているのである。映画の中でも、ラ・マルセイエーズのイントロ部分が事ある度に流れたり、酒場でドイツの愛国歌を歌っていたドイツ将校たちに対抗して、客たちがラ・マルセイエーズを合唱するなど、連合国を讃え、枢軸国を貶めるシーンが度々登場する。個人的には、これらのシーンがかなり気になってしまったのは事実。そこら辺を意識せずに、米国のプロパガンダにつられて、本作を無条件に名作と評価してしまうのは、少し考えものである。
akrutm

akrutm