akrutm

かもめ食堂のakrutmのレビュー・感想・評価

かもめ食堂(2005年製作の映画)
2.8
フィンランドの首都ヘルシンキを舞台に、かもめ食堂を経営する日本人女性の何気ない日常を、日本人旅行者や地元の人々との交流を通じて描いた、荻上直子監督のドラマ映画。原作は群ようこの同名小説。

一言で言うと「スローライフのすすめ」という内容。世間の評価は高い作品だが、自分にはまったく合わなかった。最近は徐々にスローライフに移行しようと試みていることもあって、自分がスローライフを送りたいと強く思っている。でも、他人がスローライフを送っているところだけをむき出しで見せられても、面白くも何ともない。単に、So what? と思うだけ。

なぜならば、小林聡美が演じているサチエの正体や背景がまったく明かされないままに、日常だけを淡々と見せられるから。(芸術性を追求する映画は除くとして)フィクションとしての映画がドキュメンタリーと異なるのは、興味深いストーリー構成やそれを魅力的にみせる演出にある。それらが決定的に欠けている本作は、フィクション映画としてはお粗末なのである。

一方で、現実感に欠けているという点で、ドキュメンタリー風の映画にもなり得ていない。だって、ずっと閑古鳥が鳴いたままで食堂の経営が成り立っているのが不思議である。北欧ってめちゃくちゃ物価が高いのに、お金のことはまったく気にする様子もない(初めての客だと言ってお金をもらわない)なんて、現実感がまったく感じられない。サチエはお金を稼がなくても生活に困ることがない資産家であるという解釈は成り立つが、実はそのような人物像を設定してしまうと「スローライフのすすめ」的な内容からは離れて、「金持ちの道楽」という嫌らしい解釈になってしまう危険性がある。おそらく意図的に主人公の背景を描いていないのだと思うが、個人的にはそこに胡散くささというか超理想主義的な匂いを感じてしまうのである。

小林聡美という女優さんはとても好きなのだが、本作での演技はわざとらしくて、いかにも演じているように見えるのもマイナス。さらに、フィンランドである必然性がまったくないのも残念。食堂だから料理という関係以上に料理が関係していない内容も☓
akrutm

akrutm