菩薩

イサドラの子どもたちの菩薩のレビュー・感想・評価

イサドラの子どもたち(2019年製作の映画)
3.7
とりあえず「バカヤロー!」と書いておいた下書きを消す事から始めた、俺が知っているダンカンとは違って初めての失恋を経験した中二の娘くらい繊細な作品だった。彼女が深い喪失の中から生み出した訳ではなく掘り起こした、太古から繰り返される子を抱きその頭を撫で手を繋ぐ慈しみの動作。死を発端とする聖なる舞踏は「母」から「母」へと伝播を続け、時代も人種も分け隔てない癒しへと導かれていく。今は亡き子供達に対する慈しみ、遠く離れそれでも心は通じ合っていると信じてやまない子達への慈しみ、この先いずれ生まれ出るとも知れぬ子達への慈しみ、深く強い慈しみの感情は円環を描き現代のイサドラへと帰還する。監督がこの作品を通して我々に何を伝えようとしたかは知るところでないが、あなたの悲しみはあなた一人で背負うべきものではないのです、あなたの深い悲しみはいつかどこかで誰かの悲しみと連帯し、あなたの悲しみをも癒すことになるでしょう、なんて言う理想的なメッセージを感じた。まぁ加持さん風に言えば「つらいことを知ってる人間のほうが、それだけ人にやさしくできる。それは弱さとは違うからな。」ってやつ、勿論エヴァはまるで関係ないが俺はこの台詞が一番好きなのだ(どうでもいい)。にしても図形楽譜より複雑そうな舞踏譜をよく解読できるよなと感心してしまう。大野一雄の「わたしのお母さん」とはまるで違うし正反対だと思うが、舞踏と母の親和性は高いのかもしれない。
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