このレビューはネタバレを含みます
役所広司さんの演技が圧巻。
少年院から始まって人生の大半を刑務所で暮らした男が出所して人生をやり直そうとす話。
主人公、三上の惨めっぷりが自分と重なりすぎて、少し滑稽で観客から笑いが漏れたシーンでも私は笑えなかった。
最後の、空にタイトルを映す演出は
組の姐さんが
「娑婆は決まりが多くて我慢ばかりの上に苦しいことが多い世界だ、
だけど空が広いって聞くよ」
と言い残して三上を逃したシーンと重なってなんとも切ない。
就職祝いでみんなで集まった時に、
弁護士夫婦が
主人公の融通の効かない生真面目なまっすぐさに、
自分を守るために逃げること、見て見ぬ振りも大事だと説くところは
そこをうまく立ち回れない人間が、いつも損ばっかり被るのか。
と腑に落ちた。
でもなんでこうやって物語で見る分にはみんな弱者に共感するのに、現実では弱者を虐げるのだろうと不思議になる。
1番泣けたのは三上が死ぬところではなく
その少し前に主人公が自分を押し殺して障害を持ってる職員が虐げられ嘲笑されているのを見て見ぬ振りしたところ。
三上の痛みや怒りが不穏な音と画面の迫力でリアルに迫ってきて、思わず今までの全てを不意にして嘲笑している同僚に手をかけてしまうのではという不安と、抑え込んだ怒りのやりきれなさでいっぱいになった。
危うい彼が、このままいつまでも幸せに暮らしましたとさ という未来は想像が出来ず、
ささやかながら温かく支えてくれる仲間が別れを惜しんでいる今のうちに人生を終えることができて、
この結末が1番最良だったんじゃないかと思ってしまった。