ちぴ郎

すばらしき世界のちぴ郎のネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

西川美和が好きなので新作楽しみにしていた!
ついこないだ観たヤクザと家族にも繋がるところありで、今ヤクザって以前のようには生きられなくて、徹底して排除されてるんだな。
わたしは暴力とか恐怖で人を抑制しようとすることには断固反対なので基本的にはそれでいいと思うんだけど、ただ、ヤクザとか犯罪者にならざるを得なかったひとっていう、それは育った環境とかによって、自分で選べなかった人たちが生きるために行き着く先としてのヤクザっていうことがあるだろうから、そう思うと、そうなる前にできることはあるはずとも思う。
根本を考えずに、悪いものは悪いって理由なく排除だけをしていても、結局また新しい似たような何かができるって繰り返しになってしまうよな…。
そもそも、大多数の人が生きやすくするための社会のルールというか制度であるはずなんだけど、誰かが決めたことだからもちろんそれに沿って生きられない人だって絶対にいて、守れない人は排除ではなくて、その人たちのためにもきっと合う場所があるはずだし、そこに個人で辿り着くのは難しいだろうから、導いてあげられるような社会だといいのだけど…。
今作のように、橋爪功とか六角さんみたいな、自分の損得とは別で寄り添うことのできる人たちに、刑務所から出た人が出会えることってどれぐらい可能性があるんだろう。
そういう人たちに出会うことはすごく難しいと思う。もちろんたくさんいると思うし、その存在が希望でしか無いからそう信じたいし、そうであってほしい。
やっぱり何か自暴自棄とか、衝動的になってしまいそうな時に思いとどまらせることができるのは、そうゆう時にパッと思い浮かぶ自分の大切にしてる思いとか人なんじゃないか。
人を殺した人でも、今度こそはって頑張ろうとしてる人にはちゃんと受け入れて支える寛容さが社会全体にもっと必要なんだよね。。
社会のルールから溢れてしまったひとたちがたどり着く先としてのヤクザやホームレスを、さらに排除だけして生きられなくすることには徹底してるのに、制度を決める側の政治家の方には甘すぎて腹立つことばかり。。
三上さんが仕事を見つけて、祝ってくれる友人がいて、職場でこれまでなら事件になっていただろうところを我慢して、みんなから馬鹿にされている真っ直ぐな同僚と心を通わせて、仕事を終えて家に帰って花の匂いを嗅ぐって、理不尽なことを我慢するのは正解では無いけど、やればできたの第一歩だったんだよなぁ。
泣きました。

これを観たヒューマントラスト渋谷の向かいには以前宮下公園があってホームレスを排除してできた今は富裕層向けのハイブランドが入った商業施設になっていて、表向きはキラキラしていても、そこから立ち去った人たちはどうしてるんだろう、と思った。

2021.11
ちぴ郎

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