菩薩

すばらしき世界の菩薩のレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
2.5
『男はつらいよ』と『免許がない!』と『シャブ極道』のミックスムービー。『シャブ極道』ではシャブをしゃぶしゃぶにかけてシャブしゃぶしゃぶや〜!でお馴染みの役所広司であるが、本作ではしゃぶしゃぶの代わりにすき焼きを食らっているし「元気が出る薬」も冗談で済まされている。彼の生い立ちにしても瞼の母を求める姿勢にしてもほぼ寅さんのそれなので既視感バリバリであるが、寅さんには一応父親がいたしヤクザな稼業と言えども暴力よりも口が立つ方に向かえたのは幸福な事だったのかもしれない、ちなみに出てくるソープ嬢の名前もリリー。『海街dialy』同様、二の腕に定評のある長澤は此処でも健在であるが、シャバで容易にノースリーブを着られる堅気と、タンクトップでも着ようものなら彫り物全開とのヤクザとで対比が為されている。話はまぁ…至って普通の「社会はつらいよ」でしかなく、ペース配分も序盤1時間頑張る、30分グレる、30分やっぱり頑張ると至って普通、重要な箇所が基本的に電話やインターファンごしの会話で済まされてしまっているのはコロナの影響かな?と思ったが、これ完成はいつなんだ…。西川美和の作為的過ぎる部分がどうしても受け付けないので、介護施設でのあれこれなんかで完全に冷めてしまった、あと図書館の中で通話する太賀(一応通話禁止マークは映り込むが…)とか、13年のブランクを物ともせずに余裕でiPhoneを操る役所広司(求職の為…?とも思うが一方の白竜はガラケー)とかも、もう少し細部に凝るべきでは。ただまぁ一度社会に弾かれた者が再び社会に戻る為には…とのメッセージは大切な事だと思うし、これは何もヤクザがどうでは無くかつて完全に引きこもり生活にハマった自分としては、とりあえずの貯金も底を尽き街中の「稼げる!」に縋りたくなる気持ちは分かり過ぎて心が死んだ。とは言え個人的な評価としては「至って普通」以上の何物でもない、まさみの二の腕と梶芽衣子の歌唱は良かったが、あれだって下の部屋の人に迷惑なんじゃないの…?と思ってしまった。西川美和、まるでハマらない…。これを観た人達がこう言う人間を食い物にしない世界になれば良いとは思った。
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