このレビューはネタバレを含みます
途中までは傑作。元犯罪者、それも再犯を繰り返して反省の態度もあまり見られない元ヤクザが苦労しながら社会復帰するという、世間受けしないが社会的意義の非常に大きいテーマを選んだことは素晴らしいし、ラストを除いて脚本も優れたものであった。
しかし最後に主人公が病死したのはあまりにも安直すぎる。犯罪者の社会復帰という映画のテーマ上、ありうるラストは、世間の無理解に苦労しつつも社会に復帰していくか、目の前の不条理に我慢できずに衝動的に暴力をふるってしまい刑務所に戻るかの二択である。病死というラストは社会復帰という映画のテーマを置き去りにしている。結果として、この映画が、世間に自らの主張を投げかける骨太な社会派映画という体裁をとっているにも関わらず、何を主張したいかが不明瞭となってしまっている。個人的には知的障害のある同僚からもらった花を抱えて家に帰るシーンで終われば良かったと思う。もし病死する結末でなければこの映画は確実に名作になったはず。非常に残念。
