Lemeshevist

いつか晴れた日にのLemeshevistのネタバレレビュー・内容・結末

いつか晴れた日に(1995年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ジェイン・オースティンの小説が持つ面白さの一つは、「こんな人物いるいる!」的な俗物の風刺的描写の面白さである。いくつかジェイン・オースティン原作の映画作品を視たが、このような風刺の面白さを映像で表現することは困難であるようだ。例えば、冒頭で、義兄ジョンが主人公たちへ金銭的に援助するのをドケチで利己的な妻ファニーが制止するシーンがある。映画では援助する必要なしと頭ごなしに夫に伝えるだけであるが、原作では、初めに主人公たちに3000ポンド渡すというジョンの気持ちを尊重する態度を取りつつも、数ページに渡りあれやこれやと巧みな話術で説得することで、ジョンは始めの親切心なぞ忘れて、主人公たちに支援する必要なしと態度を180度変えてしまう。この話術の描写は非常に面白く、オースティンの人間観察力の鋭さ、ユーモアセンスの高さを象徴している。
このように人間や人間関係の機微を饒舌な文章で多面的に巧みに描くことがオースティン小説の面白さの一つである。映像は文章と異なる。このような面白さは映像化で容易に失われる。
本作はオースティン作品を上手く映像化した作品であるが、オースティンの面白さを損なっている面も否定できない。この映画をありきたりのドラマだと思い、オースティンの作品はつまらないと断言する前に、原作の小説を読んでほしいと思う。
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