銀木犀

すばらしき世界の銀木犀のネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

本当に考えさせられた話だったし、この世界に悲しさを抱いた。冒頭部分は感情移入してしまって、見るのがつらくなった。

まっすぐすぎるが故の生きにくさ。
「全てのことを受け入れるほど、人間は強くない」とセリフであったけれど、多くの人が様々なことを受け流して生きている。そんな世界は果たして正しいのか分からない。ただ「シャバは我慢の連続だけど、空は広いと言います」と言うように、そこでしか見れない景色もあるし出会えない人もいる。私たちはそんな世界に身をおいている。でも介護施設にいた、障害を持った人の仕草を馬鹿にするようなそんな人間にはなりたくないと思った。あの人たちもきっと、ハンデを持った人のカバーを今まで沢山してきて、鬱憤が溜まっているんだろうから、そこで発散しちゃってるのかな…。

テレビ局の女性も、きっと視聴者に響く番組をと信念を持って仕事をしているし、言ってることも正しいんだけど表面的な感じがした。やっぱり人の人生を視聴率を稼ぐものとしてしか見てないような感じ。男性のようにあの現場にいたら、止められもせず、カメラも回し続けられず逃げてしまう人なんて大半なんじゃないかな。私はカメラを回し続けられる女性の方に恐怖を感じてしまった、、、。

主人公がお母さんにお産の時の話を聞きたいと言っていた場面が印象的だった。確かに、この世でお母さんしか知らないことだもんね。自分自身、小学校の宿題の時にしか聞いたことなかった。大人になった今、聞いてみようかな。

「人を殺めたこと」に対して三上さんは罪悪感を抱いていない。罪の意識が欠如している人間を私は今まで悪だと思っていた。ただこの物語を見るとそうも言い切れない。
主人公に対しては勿論、テレビ局の女性、施設の職員、疑ってくる人々に対して、相手の立場も人生も知らず、善悪で決めつける行為がどれだけ単純な考えだったのかと感じた。
銀木犀

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