このレビューはネタバレを含みます
エネルギーのめちゃくちゃ大きい映画だった。
なんかわからないままエネルギーの余波で涙出てきて落ち着いた後理解が追いついてもう1回泣いた。しんどい。
全員が全員ではないけど、三上を囲む人が皆、身元引受人もディレクターもケースワーカーもスーパーの店長も地元の兄弟もその奥さんも免許センター?の女性でさえ、人情の厚い人でとても優しい世界だった。あんなすぐカッとなって怒鳴るような人が身近な他人としていたら関わらないように拒絶するものだと思うが、少し関わっただけの彼らが三上の選択を真っ当なものになるよう真っ直ぐ正面から向き合って反論されても諭して手を引いてやって、無鉄砲な三上もそれに応えていって、表面的でない人の関わりが描かれていた。
長澤まさみは商業的な匂いしかしない役柄かと思っていたが、ディレクターへの叱責は見事だった。あれはあれでちゃんと芯がある。
三上が暴力行為に及ぶのは全て自分ではなく他人が不当な目に遭っている時だった。自分への些細な無礼に対して必要以上に激昂してはいたが暴力は他人へのそれに対してだった。あ嘘、下階の住人にブチ切れてたわ
作中で三上は真っ直ぐで優しすぎると言われていたが実際そうなんだと思う。尊厳が傷つけられたら怒る、言って聞かないなら殴って黙らせる、黙らせたら勝ち、それが他人に向けられたものでも、というのは生きづらいほど真っ直ぐな生き方で、逆にそう生きたくても普通は難しくて出来ない。最後、職場の同僚が暴力を受けて侮辱されてるのを見過ごすのは画面の外からでも正しいのかどうか判断が出来なかった。それが苦しかったから、雨に打たれながらも嵐が来る前に摘んだ花を分けてくれた同僚の純粋な好意が泣きたいほど嬉しくて辛かったんでは。
もう一回は見られない。職場のような普通の社会で真っ直ぐさを抑えながら生きていくのは彼には辛すぎたかもしれないが、それでもあの世界で生きていく三上を見たかった。生きていってほしかった。