詩交

プラットフォームの詩交のレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
3.7
 フィリップ・ホセ・ファーマー『果しなき河よ我を誘え』のシステム版とも言える。『果てしなき河』は,十分な食料が配布され,全人類が平和に暮らせるはずの世界でも,戦争や搾取が生じるというメカニズムを描いたSF小説。人々は,うすうすと王の誕生を望んでおり,やがて誰かを祭り上げる。祭り上げられたものは,その権威を維持し,拡大しようとする。

 そのような王によって,唯一であり必要不可欠な資源である食料が牛耳られてしまう。

 『プラットフォーム』では,システムによって予め「王」及び,それ以下の序列が割り振られる。王には,支配や略奪を要せずに,全ての食料が与えられ,管理も必要としない。ただ,余った食料を次の王に引き継ぐだけでよい。

 しかし仮に王が,どんなに完璧な幸せ計画を思いついたとしても,その願いを届けるのは不可能だ。

 代わり映えのしない風景の中で,引き立てられるのは思弁と対話のみ。それは,一本木の前でただ延々と会話をしながら,来ない人を待つという『ゴドーを待ちながら』の演出さながら。単調な背景。虚無。そして,彼らも二人,何かを待っているのだ。それがなにかも分からないし,ゴドー同様に,来るかどうかさえも分からない。

 しかし,いるかどうかも分からない子どもを探し続けた母親のように,続けるしかない。ただ待てるか,待てないかだけを問うているようだ。この虚無の中では。
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