Yoko

第七の封印のYokoのレビュー・感想・評価

第七の封印(1956年製作の映画)
3.5
 ペストが蔓延している中世北ヨーロッパ。
十字軍の遠征を終え従者ともに帰路を辿る最中、騎士は黒衣を纏った死神に遭遇。
彼は死神に対してチェスの勝負を申し込み、負けたら潔く死を迎え入れるという提案を持ち出す…。

 死体、火あぶり、ペストに苦しむ大行列が唱える終末論等といった「死のイメージ」があちらこちら蔓延する環境下において、救世主である神の存在を信じたい男の虚しさが痛烈に伝わってくる。
冒頭、荒涼たる岸壁と荒波漂う海原の絶望的な美しさを持つ背景に対して、人物がCG合成のような違和感で”浮いている”存在になっており、俗世との隔絶を暗示しているように見えるのは編集の妙なのか偶然なのか。
 それでいて、死神との対話や仲間たちの会話劇が純粋に面白いというのがまた皮肉。
死神の挙動がここまでシュールなのも本当に笑えてしまうのに、展開するストーリーは黒い。
酒場やラストの食卓の場面、人間が見据える「視線」の力強さも伝わってくる。
 この映画はまさに「明と暗」が入り混じったような作品だった。
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