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花束みたいな恋をしたのMMMのネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

まず冒頭から坂本裕二ワールド全開。ひとつの音楽を分ける行為が許せない2人。これがのちにファミレスのおじさんからの受け売りだと知ったときは笑った。1人にひとつ恋がある。これが2人の出した結論。

そして2人の出会い、
果たしてこんなに趣味の合う人と巡り会えることってあるのだろうか。あれよあれよと仲良くなって、家まで行っちゃうのにお互い敬語で苗字にさん付けなのがなんか良い…!絶対お互いに好きなのになかなか告白できなくて、相手はどう思ってるんだろうって考えちゃうとことか、相手の写真撮って見返したりするのとか、坂本裕二はなんでこんなに若者の恋愛感を手にとるように知ってるんだよ。ガスタンクとかミイラとか、興味なくても好きな人の好きなものだから知りたいし、興味あるふうに装っちゃうのまじで初々しくてニヤケ止まらんかった。

ただ2人の金銭感覚だけ明らかにバグってるなと思ってたら、きぬは実家が太いタイプだった。麦も仕送り貰ってたっぽい。親の仕送りで彼女と同棲して、遊んでたんか。大学在学時ならまだ許せるけど、卒業して仕送り止められるのはまあ当たり前だわな、と思ってしまった。

あとホワイトデニム履くやつは私も嫌い。

この前半の見ててむずがゆくなるような恋愛の盛り上がりから後半にかけての落とし方がすごい。麦の就活のくだりからちょっとずつしんどさが見え隠れする。

喧嘩して言い合いになったのに、その後すぐになんでもないように会話始めるのほんとにる終わってる感がすごい。

ゴールデンカムイを机に広げてたのも、唐突にゼルダの伝説はじめたのも、全部きっと絹ちゃんが麦と昔みたいに話がしたい、戻りたいっていうサインだったんだろうなあ。でもそれをことごとくスルーされて、、、、でも麦も絹ちゃんのこと嫌いになったんじゃなくって、結婚も考えてたし、絹ちゃんのために働いてたし、でも麦がベットで結婚の話切り出した時は絹にスルーされて、、。ほんとうにすれ違い。どっちが悪いとかじゃなくてすれ違い。それが辛いの。

だんだんと麦が「人生の勝算」とかいう本読み出して、社会は責任とか言い出して、絹が嫌いなタイプの男になってしまっていく。そのうち麦がホワイトデニム履いてテキーラ飲むんじゃないかとヒヤヒヤしていました。

ずっとすれ違ってたのに、別れるっていう決意だけ2人の想いがリンクするのほんとにしんどい。いざ、別れるってなったら惜しくなって別れたくないって言っちゃう麦の気持ちがわかりみすぎてしんどい。付き合いはじめた時と同じように、ファミレスに行って、カラオケに行って、2人で歩いて、でもそれは終わりに向かってて…このコントラストがエモい。

個人的に別れるってなってから2人で行ったカラオケで、麦が絹の腰に手を回して歌ってて、なんていうかそれが辛かった。麦にとって絹は大切な存在であることに変わりはないし、愛しい存在なんだろうなって思った。

別れるって決まった後、3ヶ月も一緒に住めるのは、本当に、嫌いになったんじゃなくってすれ違いなんだよ。お互い再開した時には、それぞれ他に相手もいて、冒頭の会話をみるに趣味とか価値観が全然違う相手と付き合ってて。お互い偶然会って、それでやっと昔のこと思い返して、きっとそれぞれの日常でお互いの存在が確実に過去のものになってる。やっぱり付き合いはじめで、お互いのこと四六時中考えてたあの頃には絶対戻れないんだなって。

あと、パズドラしかやる気しないってセリフは、日本社会の闇を見た気がする。パズドラがこんなに流行ってる日本って…怖いよ。
あと告白するきっかけにもなった、ファミレスで間違えて運ばれたパフェ。これ食べますって言って店員喜んでたけど、あれお金払ったんかな?とかどうでもいいことが気になってしまった。

【追記】多くの人の感想を読んで、
絹と麦は自分たちの王道から外れたサブカル趣味に酔っている2人。でも実はどこにでも居るありふれた人間で、2人の出会いも運命的なものではなくてありふれたもの。ラストにファミレスに登場した初々しいカップルがその象徴。

映画のタイトルの花束みたいな恋とは…?映画で絹が言ってた、花を見るとその女の子のことを思い出すようになるってやつ。イヤホンとか、ドライヤーとかそういう小物ひとつ一つが別れた恋人を思い出させてしまう花であり、その花は1つではなくて沢山あって、それを見るたびに思い出す。だから花束。この解釈を見かけた時、自分の中でとても腑に落ちたし、個人的に好き。
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