MMM

ある男のMMMのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

自分が見たことのある範囲でしか、その人のことを知れないし知らない。目の前の人が自分と出会う前にどんな経験をしてきたのかなんて知らないし、過去がどうだったのかも実際に見ることはできない。分かることは目の前のその人だけ。

親が在日とか犯罪者だった時、子供は無関係ではあるんだけど、実際差別の対象になってしまう。
本作の弁護士の先生は在日だけど弁護士という位の高い職業についてるから、義理の両親に認めてもらえてるんだと思う。そしてきっと本人も在日で差別されつつも、自分も犯罪者を差別している。国籍とか職業とか、人ってなんらかの要因で差別したりされてりしてる。たとえ自分が差別されていたとしても、また他の要因で人を差別したりする生き物。

最終的に、Xはなんの犯罪歴もなくただ親が死刑囚ということに苦しめられ、そこから逃げてきたということがわかって、子どもがお父さんのやさしさの理由を見つけてたのが良かった。たとえ目の前の過去がどうであれ、優しかったお父さんに変わりはない。名前がなんだろと変わりない。

映画を見てて少し思ったことは、本物の谷口だいすけが戸籍をトレードした理由が温泉旅館の後継という重圧に耐えられなかったって、その理由でそこまでするもんかなあ。もしかしたらもっと他に理由があるのかも知れない。あと曽根崎は結局誰だったんだっていうこと。あとXは原誠時代にはなにも罪を犯してないかも知れないけど、曽根崎と名乗ってた期間については分からないよね…もしかしたら…って思ってしまう。でもあの家族と一緒の時間を過ごした期間は優しいお父さんだったことに間違いはないから過去を全て調べ上げるのは無粋なんだろうか。

そしてラストは衝撃的だったけど、戸籍を変えるまでは行かなくても全く知らない人に全く違う経歴や身分で話をしてみたくなる衝動は誰にでもある。誰しも自分の人生から逃げ出して他の人生を歩みたくなることもあるだろうな。
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