deenity

花束みたいな恋をしたのdeenityのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.0
嫁が久しぶりに時間をくれたので、4ヵ月ぶりに劇場で何か見ようと思って悩んだ末の本作。
菅田将暉に有村架純と今が旬の役者を並べて恋愛物の作品ともなれば、さもキラキラしたラブストーリーになりそうなものの、意外とそういう作品でもないらしいとのことだったので気になり鑑賞しました。

本作の麦くんと絹ちゃんは本当にちょっとした偶然から出会って偶然趣味嗜好がもの凄くあってフィーリングも抜群で、と運命的は感じは何ともキラキラ感がすごいんですが、実際二人に好感が持てるのは俗に言うイケイケタイプなのではなく、めちゃくちゃサブカル系の種族というところ。一歩踏み出すきっかけが押井守ってのも衝撃でしたが、とにかく飛び出す単語がどれも二人の相性の良さを物語っていて、冒頭の2020年からの出会いを描いたことで、そうなってしまうことはわかっていながらも、イヤホンのカットバックからもわかるようにやはりこの二人は奇跡的に息ぴったりなんですよね。語りが多いのは本来好きではないんですけど、不思議と嫌な感じがせず、不思議と好感が持てました。

本作の演出としては結構わかりやすい方ですよね。それこそ冒頭のカットバックに始まり、二人が仲を深め、後にすれ違っていくことへの過程とかは細かく丁寧に描かれていましたし、やはりイヤホンというアイテムは効果的でしたよね。
現実を見て社会に馴染もうとする麦とあくまで理想を追う絹。その二人が共に生活しながらも、各々の空間に遮断されて心通わなくなっていく様を描く上では欠かせないアイテムだったと思います。

わかりやすいからこそじわじわとすれ違っていく様はやはり心に重くのしかかるものはありましたが、一方で告白の演出は個人的に好きですね。スマホ越しに相手を映し、告白と共に本人にピントが合っていく感じ。スマホに向かっての関係から二人の関係へと移り変わっていく様を表現したのは上手かったですね。

まあ正直ここまでだったら評価はもうちょい低くてもいいですけど、二人の別れ際のシーンが個人的にはぶっ刺さったのが大きかったですかね。
自分も結婚前は付き合いが長くてああいう喧嘩を何度もしたことがありましたし、ダメかもしれんと思ったことも何度もありました。そん時にやっぱ考えるのは恋愛的な感情って一生続くものではなくって、どうやってもあの出会った当初の関係には戻れなくて。今のまま続けるのはよくないのかもしれないとか、いっそ戻ることができないなら別れた方がいいのかもしれないとか、散々考えた挙句、今は結婚しているわけですが、まさにあんな感じのやりとりは自分と重なり過ぎていて、感慨深いものがありました。
いや、あのタイミングで当時の自分たちと重なるカップルを見るのって、当然映画の演出的なものですが、実際まじできついんですよね。自分もああいうタイミングで出会った頃を脳内再生して苦しくなったりしたんで、かなり思うものがありました。

でも実際同じような思いに至っても自分なんかは結婚して幸せに日々を送っているわけで、そういう選択をしていたらたぶんきっと彼らもそうなったんだろうなとかも思ったりして、でも彼が選んだのは自分たちの恋を「花束みたいな恋」として残すことで、「始まりは終わりの始まり」とか花の名前を教えないのとか、やっぱり絶妙に切ないけどそれはそれで美しくて、意外にもいい恋愛物を見たなっていう満足感を感じてます。
久しぶりの映画館でめっちゃ集中して見れたので長文なってしまい失礼しました。
deenity

deenity