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花束みたいな恋をしたのmanamiのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
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ほとんどのシーンが何気ない日常を描いてて、CGもアクションもないこういう作品は「わざわざ映画館で見なくてもいっか」って思われがちかもしれない。でも本当は全然そんなことないのになぁ。映画館で没入して観る素晴らしさを、静かに堪能できる作品だわ。
サブカルオタ度高めな点以外はごくごく普通の二人・麦くんと絹ちゃんの、ごくごく普通の恋。出会いの夜の長さだけはちょっと引っかかるけど(終電→カフェ?→居酒屋→カラオケ、それでもまだ暗いって、夜長くない?)、それ以外は全てがリアリスティック。
お揃いの靴、終わらない会話、まさに身も心も離れがたい、恋が盛り上がっていく過程。身に覚えがありすぎて、なんだか恥ずかしくなってしまったのは、きっと私だけではないはず。
それでいてファンタジー。あんなに趣味嗜好の合う人に出会えたことあります?しかも同世代で、異性で、家もそう遠くない。これ運命感じるなって方が無理でしょ。一緒にマンガを読みながら一緒に泣くとか、憧れしかないよ!!
実在する固有名詞が次々に出てくるから、世代が近ければ近いほど共感できるんだろうな。例えば火曜には学校で、友だちと指スマやってたようなら、もっと刺さる要素多いはず。
あと本棚って、持ち主の人間性が出るよね。誰かのお部屋に初めて招かれて、本棚に趣味の良い本が並んでるのを発見したりしたら、その人の好感度爆上がりするよね。逆に90×180の本棚すら埋められてない人だったら、ちょっと話合わないかもって心の中で思っちゃうしね。
本の虫な二人だからか、モノローグの多用が気にならない、むしろ読書してるかのような感覚になれる。「小説みたいな映画観た」とでも言っておきましょうか。
そう、花束みたいな恋をした、これも素晴らしい。「土井裕泰✖️坂元裕二作品に菅田将暉だなんて、絶対に観たいやつじゃん」ってなって、タイトル知って「この時点でもう好きなんですけど」ってなって、公開を楽しみに待ってて期待値上げまくっちゃって鑑賞したわけですよ。
野の花だろうが何だろうが花を集めればそれだけで花束だし、となると花束を見たことない人はいないだろうし、特別なようで意外と身近な存在、花束。作中でも触れられるスマスマ最終回でも歌ってたよね、花は一つとして同じものはない、って。
レビュー前半で「日常」とか「ごく普通」とかって言葉を使ったけれど、それでいて二人の恋は二人だけのもの、まさに世界に一つだけ。
そして花束も生ものなんだよね。加持さんの言うように、恋も同じなのかな。だとしたらこのお話は「恋愛もの」じゃなくて、「恋だけ」を描いたものでしょう。二人の間には恋しかなかった、良くも悪くも。だからあのファミレスで向かい合ったら、あの選択をするしかなかった。
レビューはまだまだ書き続けられそう、でもキリがないから、このあたりで止めときます。

13
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