白石ころ

花束みたいな恋をしたの白石ころのネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

邦画の恋愛映画あまり観ないけど面白かった。

麦と絹のように好きなものや考え方、言葉選びや笑いのツボが一緒な人に出会ったら、運命を感じざるを得ないだろうし、一瞬で恋に落ちてしまうと思う。
同棲生活のシーンは大学生の半同棲あるあるが詰め込まれてて懐かしい気持ちになった。

天竺鼠、小川洋子、ミイラ展、穂村弘、きのこ帝国、ままごと、ゴールデンカムイ、宝石の国、ほしよりこ、クーリンチェと、散々自分が消費してきたサブカル固有名詞がどんどん出てきて、まさに2015年頃、文化系大学生だった私は瀕死。
でも、もともと取っていた単独ライブより男との焼肉を優先したり、そもそも忘れてて行きそびれたりする時点で、そこまでカルチャーへの熱量があるわけではないだろうことが伺えるので、ふたりは『カルチャー好きの自分が好き』みたいな人種だったんだと思う。
2人が自分の意見や考えだと思っているものが、ほとんど他人の言葉なのも「この子たちはそういう子です」って言われている気がした。ジャンケンについてなんて使い古された話だし、ブロガーの言葉を自分の恋愛観としたり、なにか嫌なことが起きても「あの時のブラジルよりマシ」と考えたり。幼いというか、自分がないというか、だからどんどん変わっていってしまったんだろうなあ。

恋のライバルが現れたり、愛する人が病気になったり、そういう劇的なイベントは起こらない。ただただゆっくりと2人の思考がすれ違って、関係性が変わっていって、恋が終わる。どちらかが一方的に悪いわけでもない、よくある恋愛の話。

幸せの絶頂のタイミングで麦が「僕の人生の目標は絹ちゃんとの幸せな日々の現状維持です」と言っていて、『現状維持』という元から低い目標のために、どんどんハードルを下げて、自分の夢も諦めて、『普通のサラリーマン』になっていくのが悲しかった。もしかすると不治の病なんかより、大好きだった人が変わっていくのをそばで見ることのほうが辛いかもしれない。

恋愛って本当、このくらい些細でくだらなくてでも愛おしいよねって気持ちにさせられた。