はるたろ

花束みたいな恋をしたのはるたろのネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

いろいろなことが重なってこのタイミングで鑑賞。序盤はあまりにサブカルしすぎていて離脱しようかと思ったくらいだった。踏み絵をしているかのように、間違ったことを言ったら糾弾されるような、センスを試されているあの感じはとても居心地が悪い。好きなもので相手を値踏みする感じというか。

見ながら考えていたのは、自分の気持ちに敏感な人は相手の気持ちには鈍感だということ。とにかくそう感じている自分が大事で、相手のことはお構いなしな傾向にある。友人の結婚式の場で「別れ話しようと思ってる」と話す場面なんかはまさにそうで、あまりにも自分しか見えてないなと思った。シンプルに縁起悪い。
あと絹が初めて麦の家に行ったときに、本棚を品定めでもするかのように不躾に見ているのも、そのあと勝手にスケッチブックを取り出して中身を見ていたのもなんてデリカシーがないんだと思った。

就職してからの麦を見ているのはとてもつらいものがあった。あんなに本を読んでいたのに本屋に行っても自己啓発本やビジネス書ばかりで、本棚にもいつの間にかそういう本ばかり並んでいた。お気に入りのパン屋さんが閉店になったのに「駅前のパン屋でいいじゃん」と平然と言ってのけるのも、「映画とかまたして欲しいことがあったら言ってね」というのも、もう二人をつなぐものはなくなったと突きつけられるシーンは胸が痛んだ。でも、麦はそれをなんと思っていなくて、絹だけが取り残されていた。絹が転職を打ち明ける場面は、私も絹のような考えをするタイプだから、麦の言い分には少し腹が立った。でもいつまでも同じというわけにはいかないし、麦がいる環境を考えたらああいう考え方になるのかもしれない。

別れ話のとき、麦が「じゃあ結婚しよう」の思考になるのも怖かった。もう二人を繋ぎとめているものはなにもないのに、恋愛感情がなくたって、いやなことがあったってそれに目をつむって生活を続けていくのが結婚生活だって言い聞かせているのも怖いし、それで絹がどんなにつらい思いをするかも想像できていない。「じゃあ」の呪縛よ…。二人のもう戻れないということを、二人に語らせるのではなく出会ったころのような二人を登場させることでまざまざと見せつける場面はよかった。

結局絹はオダジョーと…ということやったんかな。
別れた後の麦はゲームもしてたし本とかも読んでそうだったけど、仕事変えたんかな。もっと早くその状態に戻れていたら二人の未来もあったのかな、と思わずにはいられないけど、別れたからこそこの未来があったのだろうな。

ブルーバレンタインを思い出したからあちらもまた見返したい。
はるたろ

はるたろ