ムギ山

花束みたいな恋をしたのムギ山のネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

こういう固有名詞頻出型というか神は細部に宿る的な作品って、「神は細部」だからこそ、細かーいところが気になってしまうのである。たとえば、押井守を知らない人に説明するときに犬とか立ち食いそばとか言うのはヘンだろうとか、たまたま知り合いに会ったからといって金出してチケット買ったライブをパスするのは何故なのかとか、調布駅から徒歩30分のアパート借りたら普通そのあとチャリ買わん?とか、そういう些細なハテナが積み重なってしまって、結果的になかなか共感ができなかったのだった。

そもそも、二人の趣味が合うといっても「ほぼうちの本棚だ…」みたいな合い方というのは現実にはそんなになくて、それよりも「読みたかったマンガを持ってたから貸してもらった」とか「見損なった映画の感想聞いた」というようなケースのほうが遥かに多かろうし、その方がその後の二人の関係も盛り上がるような気がするのだけど、なんでそういう関係にしなかったのか疑問である。

後半、イラストで稼ぐのを諦めた(あんな完成度の高いイラストを描けるのに簡単に諦めるのは不自然だ、という感想を本職のイラストレーターの方がブログで書いていて成程と思った)麦さんが就職し、これまでのようにカルチャーに時間をかけられなくなるというのはありがちな話だとは思うけど、それを描写するのに「パズドラやら自己啓発書にしか興味がなくなる」という描き方をするのは、パズドラや自己啓発書を何気に下に見ていて不快である。それに、話が長くなるので詳しくは書けないけど、「カルチャーからだんだん離れてしまう社会人」って、もうちょっと離れ方が屈折するもんなんじゃないかと思うのである。

というわけで、「めっちゃリアルなフィクション」を目指したんだろうけど、その仕掛けのせいでかえってリアルから離れてしまったという気がする。でも考えてみりゃ脚本の坂元裕二さんも監督の土井裕泰さんも「就職のためにカルチャーから離れた」という経歴の人じゃない(多分)わけで、それもしょうがないのかなーとも思うのだった。
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