あんがすざろっく

花束みたいな恋をしたのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.8
きっかけは、押井守だった。


終電を逃し、始発まで駅近くの居酒屋で過ごすことになった初対面の男女4人。
社会人の男女2人は意気投合した様子だが、若い男女2人の方はどうもその空気に乗れない。

実写版魔女の宅急便の話で盛り上がる社会人2人と、ドン引きする若者2人。

しばらくすると、若い男の子の方が奥の席で話し込む人物を目に留め、興奮の面持ちで呟く。
「あそこに神様がいます🫣」
社会人の2人は当の人物を視認しても、何のことだかさっぱり分からない。
だが、若い女の子はすぐに理解した。
神様がいると。

居酒屋を出て解散した4人だが、女の子は男の子に話さなければならないと感じた。
それが礼儀だと思ったから。

「押井守、いましたね☺️」

これが、山音麦と八谷絹の出会いだった。




フィルマの皆さんならば、ある程度の方はご存知ですよね、押井守監督。

世界的に有名ではありますが、サブカルに詳しい人でないとご存知ないかも知れません。
っていうか、近くにいても気付かないし、分からないでしょうけどね😅

そんなサブカル愛を絶妙に散りばめ、二人の恋の始まり、社会人になる為の試練、男女間の埋められない考え方の違いを、活き活きとした台詞で彩った恋愛映画です。
その年々のサブカルのトピックも語られるので、あ〜この年か‼️ってなります。


僕普段から、恋愛映画はそんなに見ないんです。
邦画だと尚更。
洋画の恋愛映画は客観的に見れるんですよね。キャメロン・ディアスでもメグ・ライアンでも、ハリウッドスターの映画として見れます。

恋愛映画って、主演のキャストありきじゃないですか。
カッコイイ男優さんとカワイイ女優さんが共演して、ファンの人が「カッコイイ😍」「カワイイ🥰」って大騒ぎするだけのイメージがあるんですね…
キャストが違うだけで、やってることは同じなんじゃない?と、よく見たこともないのに、さも見てきたようなこと言っちゃってますけど😰
映画のCMとかで、劇場で観たお客さんがハンカチ片手に「今までで一番泣きました🥲」とか言ってるのも好きになれない。
(泣いてるお客さんが悪いのじゃなくて、それを宣伝に使おうとするCMの在り方が嫌い)
要するに、僕は恋愛映画に偏見を持ってしまってるんです。
こんな恋愛、現実にある訳ねぇじゃん‼️って半分僻みですね😅

そんなこんなで、本作が劇場で公開した時も最初は注目してなかったんですけど、周りの人がみんな絶賛してるし、大好きな有村架純さん主演だったので、これは一度観てみようかな、と劇場へ足を運びました。


申し訳ありません、後半ずっと泣きっぱなしでした😭
あまりにも素晴らしくて、思ったことを全てレビューに落とし込めなかったんです。
何度か見返していて、今回レビューをあげようと再鑑賞。


麦君と絹ちゃんの出会いまでには多少時間があって、そこに行き着くまでに、二人のキャラクターを丁寧に描いていきます。
面白いくらいに思考が一緒なのが、先に見ている僕達に伝わってくるんです。
だからこの二人の偶然の巡り合わせを、見ている方が嬉しくなってしまう。
良かったね、こんなに相性のいい人と出会えて…🥰

想いを伝えることの緊張感。
なかなか言えないもどかしさ。
もう少し時間があれば。
どのタイミングで切り出せば。
お互いが、この時間が終わることを延ばし延ばしにしてしまう。

そして、お互いが同じ気持ちでいたことを知った瞬間。
それは、高揚感よりも、安堵感の方が強かったのかも。

二人とも、どちらかと言うと不器用で、周りの若者と同じノリではしゃぐことが出来ない。
だからこそ、お互いが同じ物事に対して、同じ熱量で盛り上がれることが嬉しかったんでしょうね。
遠出でデートしたり、同居生活がスタートしたり、猫を飼ったり。
楽しい日々はどんどん過ぎていく。


後半になって、その楽しかった日々は徐々に崩れ始め、「現状維持」が難しくなってきます。
あっ、ここからすれ違っていくのか…
これは辛い。
嘘がないから、余計に辛い。
読んでいる本も、次第に変わっていく。

「楽して過ごして欲しい。」
「無理をしないで仕事をして欲しい。」

それはきっと、親の背中を見て身につけてきた、理想の生き方。

二人とも、お互いのことを思い遣っての結果だと分かるのですけど、そこに生まれ育った環境と、男女の考えの差が生まれてしまうのです。

僕も通過してきたはずだけど、大人になるって、こんなにも捨てなきゃいけないものがあったかな。

取り返しのつかない一言。
大事な時に言わなきゃいけないのに、そのタイミングじゃないんだよ。
その後で「忘れて」も、ない。
気持ちは分かるんだけど、覚悟の仕方が全然違う。一人で背負い込もうとし過ぎてる。
そうじゃないんだよね。

大人になるのは、楽なことじゃないです。
楽しいことだけじゃないです。
でもこんな思い出を積み重ねた麦君と絹ちゃんが羨ましくて仕方ない。
僕なんか、若い頃の思い出は上書きしたいことばっかりですよ。

ただ、作品を見終わると、楽しかった思い出ばかり振り返ってしまう。

どうしても絡まるイヤホン。

同じ白のコンバース。

映画の半券をしおりにするタイプ。

カラオケ屋さんにしか見えないカラオケ屋。

じゃんけんのおかしな法則。

天竺鼠とキノコ帝国。

コンセントがギリ届いたドライヤー。

劇場版ガスタンク、3時間。

ほぼうちの本棚じゃん🤭

別れ際のミイラ展のお誘い。

私山音さんの絵、好きです、って言われた。

もったいないもったいない。
まだ上書きしないで。

サンキュー、押しボタン式信号。

焼きそばパンの美味しいパン屋さん。

片道30分の帰り道。

おんなじクリスマスプレゼント。

奇跡のストリートビュー。



主演のお二人は、もう見事。
俳優としてじゃなく、もうそこにいるのは
麦君と絹ちゃんでした。

大友良英さんが手がけたテーマ曲や劇伴も雰囲気あって良きです☺️


あれから2年。
今年坂元裕二さんは、カンヌ国際映画祭にて「怪物」で脚本賞を受賞しました。
いや、ご本人からしたらデビューしてから何十年、ようやくここへ辿り着いたという思いでしょう。

日本映画の脚本家さんで知っているのは、宮藤官九郎さんぐらいだったのですが、そんな中で、初めて大好きな脚本家さんに巡り会えました。

ビターエンドのはずなのに、とっても爽やかな終わり方。
この二人ならではの、背中越しの「じゃあね」。

最近は少し日本の恋愛映画も見られるようになりましたが、僕にとっては本作の存在が大きいんです。
これからも何度も見返すことになるであろう、僕にとってはこの上なく大事な映画です。


一度奥さんと家で一緒に見ました。
見終わった後の奥さんの反応が気になった。
見事奥さんには全く刺さらなかったようです。
そんなもんだよね。
僕デジタル時計をたまたま見た時に22時22分とか、12時34分56秒とかに当たるとそれだけでテンション上がるんだけど、奥さんは全く分かってくれない😫
音楽をイヤホンで聴く時、LとRを片方ずつ聴いたら全然別の曲になるって、奥さんも絶対理解してくれないタイプです。

全く違う性格だし、ぶつかり合うこともしょっちゅうだけど、だから続くこともあるのかなぁって思う今日この頃です。


今年も残り僅か。
多分、これが今年最後のレビューかな。
思い入れのある作品を選びたかったので、いいチョイスだと思っています。
皆様、今年一年ありがとうございました。
まだ数日ありますが、後はフォロワーの皆さんのレビューを拝読しながら過ごさせて頂きます。
来年も宜しくお願い致します😊
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