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カモン カモンのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
1.8
【A24新作、マイクが近すぎてのけぞる子どもたち】
2022年、早々の映画イベントといえばアカデミー賞。上半期は毎年恒例アカデミー賞関連作品を片っ端から観ていく時期となります。第94回アカデミー賞A24枠として注目されているのがマイク・ミルズ最新作『C'mon C'mon』だ。A24といえば、配給だけ担当している作品が多いのだが(故によくA24製作と間違って認識される)、本作はしっかり製作にも関わっています。マイク・ミルズ映画といえば『サムサッカー』や『20センチュリー・ウーマン』など人間の心理に歩み寄る作品が多い。主演が『JOKER』のホアキン・フェニックスだけあって期待大でした。しかし、観てみたところかなり難がある作品に思えました。

精神的に少し落ち込んでいるラジオ局の男ジョニー(ホアキン・フェニックス)は取材して回っている。取材対象は主に子どもである。未来や環境、社会について純粋な意見を聞き出している。そんな中、妹から甥ジェシー(ウディ・ノーマン)の面倒をみるよう言われる。あまり乗り気ではなかったが、彼を連れて旅に出る。ケン・ローチ映画で知られる撮影監督ロビー・ライアンの温もりある白黒の陰影とマイク・ミルズの優しいドラマが魅力的な本作。

しかしながら、劇中で展開されるドラマが、ジョニーが内なるモヤモヤを隠しながらジェシーと触れ合う一辺倒で2時間近く魅せられるには退屈してしまう。ジョニーは、ジャーナリストであるが人と接するのがあまり得意ではなさそうだ。故に取材対象者との間合いがとても近く、至近距離にマイクを持っていくので、子どもが少しのけぞったりしている。コミュ障の間合いの取り方の困難さを、マイクとの距離で表現するのは興味深く、何度もマイクが登場するので割と意識した演出であろう。しかしながら、別の取材者も同様にマイクを至近距離に近づけてしまっているので、あまり意味をなしていないように見える。高圧的なマイク捌きを執拗に映すが、そこに意味がなく、無闇に尺を伸ばしているだけに見えてしまった。

ドラマに目を向けると、子どもとの接し方がよくわからないジョニーの右往左往が描かれる。例えば、スーパーで買い物をしていると、ジェシーがふざけていなくなり不安になる場面があったりする。朝っぱらから大音量で音楽を流したりする。彼の無邪気さに振り回されながらも親密な関係になっていく。映画はそれだけしか描いていない。なので展開が読めてしまうし、一歩踏み込んだ展開を見たくなるのだ。一応、大きな危機は終盤に訪れるのだが、リアリズムを意識してかすぐさま解決してしまう。結局、いい感じの映画で終わってしまい物足りなさしかありませんでした。

A24作品は日本公開遅い傾向にあるのだが、果たして公開できるのだろうか?

日本公開するならTOHOシネマズシャンテまたはヒューマントラストシネマ有楽町あたりだろう。
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