テーマとしては「子供に対してでも大人に対してでも、現実から逃げ、自分がどう感じてるか、どうしたいか包み隠したまま向き合おうとするなら、相手と表面的な付き合い以上の心の通い合いには行き着けないよ」という事が言いたいのでは？と受け取った。全て分かってるつもりでアドバイスしたり、話を聞かずに自分がしてほしい事だけを押し付けたり。別の人間だから相容れない事もある。そこから話さなくなったり距離をおくのではなく、今自分がどう思ってるかを伝えてみたら、少なくとも何かの変化は起きる。そこまでして、相手とコミュニケートしたいと思ってるのか？という話かと。正面からぶつかったとして成功するとは限らないが、何かは今までと違う方向へ進んでるはず。
…とは書いたものの、「これが正解」「これは不正解」とかいう作品でもなく、観る人によって受け取り方が変わるとも感じた。子供の真摯な声に耳を傾けるべき、とか、子育ての大変さを痛感、とか、心が壊れてしまったかもしれない人に対して家族や周囲の人はどう接するのがいいのか、とか…。子育てに関して言えば、まだジェシーくんは物分かりのいい方だと思うんだよな。後でちゃんと荒れた理由まで話してくれるし。そんな事ほとんどないと思った方が良い。子供のかんしゃくとか『あれ、一体なんだったんだ？』と理由にたどり着けない事なんてザラにあるから。
俳優陣は総じて素晴らしく、いくつか場所が移る映像の素晴らしさはモノクロでも伝わる。
考えさせられる、というよりは、自分で考えてみる作品だった。満足度が高い。スクリーンから受け取る情報量が多くても苦痛ではない、というのはなかなか無い体験。特に子供達へのインタビューはずっと聴いていたい心地よさだった。取材対象の子供達にやっているような細心の気遣いや対応を、日常で触れる生身の周りの人達に対しても示すようにしたら、この世界は少し暖かくなるのかも。
