この映画をお守りにして肌身離さず持ち歩きたい。いつか年老いて記憶が薄れても、その存在を確かめるだけで安心するような優しいお守り。「平凡なものを不滅にするってすごくクールだ」って台詞があったけど、まさにそんな映画だったと思う。別に特別な事は描かれないし、何か目新しいメッセージがある訳でもないのに、身体の内側に眠っていた小さな鈴が鳴らされて、その余韻がずっと響いているような、画面の中心から熱がじんわり伝わって世界中へ広がって行くような、輪郭を持たずに何処までも形を変えて寄り添ってくれるバーバパパのような、そんな静けさとぬくもりと労わりに満ちていたと思う。
主人公が読んでいる本の内容がモノローグとしていくつか登場するのだけど、その中でも特に印象深かったものを備忘録として残しておく。いつかちゃんと全文を読みたい。
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「星の子供」クレア・A・ニヴォラ
地球へ行くには人間の子として生まれること
まず新しい体の使い方を覚える
腕や足の動かし方 真っ直ぐ立つ方法
歩き方 走り方 手の使い方も覚える
声を出し 言葉を作ることも
やがて自分の身を守れるようになる
ここは静かで平和だが
向こうは色や感覚や音が絶えず押し寄せてくる
多くの生き物がいる 想像を超えた植物や動物
ここは常に同じだが向こうでは全てが動く
何もかもが常に変化している
地球の<時間の川>に飛び込むのだ
多くを学ぶだろう 多くを感じるだろう
快楽や恐れ 歓びや失望 悲しみや驚き
混乱と喜びの中で自分が来た場所を忘れる
大人になり旅をし仕事をする
もしかして子供や孫を持つだろう
長年かけて理解しようとする
幸せで悲しく豊かで空っぽな
変わり続ける人生の意味を
そして星に還る日が来たら
不思議な美しい世界との別れが辛くなるだろう
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「母達:愛と残酷さについて」ジャクリーン・ローズ
母性とは我々の文化に置いて
完全な人間とは何かという葛藤を埋める場所だ
母親は個人や政治の失敗
あらゆる問題への究極の生贄である
全てを解決するという不可能な任務を負っている
我々は母親に社会や我々自身の
最も厄介な重荷を押し付けている
母親は人生の困難な暗部に直面せざるを得ないのだ
なぜ物事を明るく無垢にするのが母親の役目なのか