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サイレント・トーキョーの都部のレビュー・感想・評価

サイレント・トーキョー(2020年製作の映画)
1.4
第一に作中情報の交通整理の下手さと主題の描き方の拙さに目がいく。

政治的主張を帯びた真剣味を求める物語なのかと思えば、物語の大半が荒唐無稽な筋書きで舗装されている様相には甚だ困惑させられる。また反戦的な命題を描く上での愚民や政権のステレオタイプな描写からは、きわめてナンセンスな感性と意図しか読み取れないというのが正直な感想。

『戦争を知らない今の若人はこれほど愚かであるし、現状の維持に務める政治家は無力である』と言わんばかりの土台構築は、作品の題材を考えると分からないでもないが端的に品がない。百歩譲ってそれを許すとしても、それに対して警鐘を鳴らす犯人の動機や人物像はひどく疎かで、それが作品のリアリティラインの線引きの抹消に繋がっているのはいただけない。
本作は現実と肉薄する、否、肉薄しなければ絵空事として処理されかねない荒唐無稽な物語であるのだからしっかりしてくれ。

加えてツイストの為の二転三転を仕込むならそれが陳腐化しないに足る尺と筋立てを用意するべきだし、90分の映画として情報が少ない癖に話がやたら込み入っているのでドラマが窮屈に感じられ、著しく盛り上がりに欠けるというのもあった。それでいて犯人の心変わりの要因も『舐めてんのか』としか言いようがないチョロさだし、脚本による意思決定を露骨に感じる筆致は、登場人物の信念や言動を限りなく安直なものとしている。

演技指導の問題なのか豪華な演者を揃えた割に魅せる演技もまるでなく、唯一褒める価値のある渋谷での大惨事の絵面も所詮は規模が大きいだけで、人死にを巡るには物足りない描写ばかりに終始していて、じゃあこの映画なになら満足に見れるんだよ!
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