エンバ

ファーストラヴのエンバのレビュー・感想・評価

ファーストラヴ(2021年製作の映画)
3.8
Filmarks試写会にて一足早く鑑賞しました。
原作未読でしたが、複数の劇中人物にとっての「ファーストラヴ」の描写が痛々しくもあり切なくもあり、観賞中何度か涙を流しました。『望み』に続いて人気小説の実写化傑作を送り出してきた堤幸彦監督、一時期は「全盛期は既に終わったか?」と私も不安視しておりましたが、ここにきて完全復活されたのかもしれません。
本作は、堤組らしいキレのある鮮明な映像も勿論魅力ですが、メインのキャストさん達がなんといっても素晴らしい。『さんかく窓の外側は夜』での鮮やかな出オチも記憶に新しい北川景子さん、今回は取材対象である殺人事件容疑者の心を開くため、自らのトラウマと対峙する公認心理士を熱演され、彼女自身女優として久しぶりに殻を破ったように見えました。主役として劇中の出演時間も非常に長い分、彼女の仕上がりがそのまま作品の完成度に繋がると言っても過言ではない重責を見事に果たされたと思います。
主演男優の中村倫也さん、最近は主役や準主役としての出演作が目白押しのまさにトップスターの一人。本作ではクールで優秀な弁護士である現在パートと、危うさを抱えた大学時代パートの演じ分け、過去と現在の延長線表現が素晴らしかったです。しかも今回は、00年代のトップスターの一人である窪塚洋介さんと兄弟設定。なるほど言われてみれば現在の彼は、飛ぶ鳥を落とす勢いの現在の人気といい、男としての色気といい、内包する狂気といい、人気絶頂期の窪塚さんを彷彿させるものがありますね。
そして主演のお二人に出演時間こそ劣るものの、本作の最重要人物である容疑者役の芳根京子さんは圧巻の演技力と存在感。供述内容が二転三転し、人を食ったような態度をとったかと思えば、突如狼狽して取り乱したりと、彼女の姿に鑑賞中何度心揺さぶられたことか。以前から大好きな女優さんでしたが、彼女の演技の瞬発力と深度は凄まじいものがあると本作で改めて感じました。
エンバ

エンバ