ギャス

ファーストラヴのギャスのレビュー・感想・評価

ファーストラヴ(2021年製作の映画)
3.4
女性の権利が見直されるまさに今見るべき、そして悲しいことにいまだにタイムリーであり続けるテーマ。


とてもハードルの高い演技が求められる内容だ。
芳根京子の熱演が赤い炎のよう。その爆発する憤りはマグマを思わせたが、対して最後の優しいピンク色にやっと呼吸ができるような穏やかさが際立った。

弁護士の中村は心の奥底の母親やユキとの青い痛みを隠しながらも、カンナを理解しようと奮闘し弁護する男性側としての複雑な役どころを見せた。

心理士の北川はあくまでも真っ直ぐに白く輝く希望のようで、その真っ直ぐさは窪塚の広く柔らかい慈愛に支えられていた。

理想だが、全ての人が、窪塚演じる我聞のような愛を得られるように与えられるようにと願う。


父殺しで告発された彼女だがこの事件自体は
女性におとなしさを強いて自由に生きさせない(それも無自覚に)社会、
幼い子どもに性的視線を向けることを特に問題視せず厳罰にも処さない社会、
子どもを守る意識の薄い社会、
いろいろな問題を告発している。

女性たちの中にあるそれへの無自覚さや押さえ込まれた違和感、言葉にできない想い、
それらを剥いでいくカウンセラーの作業がどれだけ大変なことか。
同じような傷を持つ人間がお互いに傷を再び開き、晒し合わなければならないほど。

罪悪感を感じる人間になりたいと冒頭に告白する彼女は、
裏を返すと罪悪感を感じていない、つまり心の奥底で私は悪くないのだと叫んでいる。
「動機を教えてほしいくらいだ」という言葉は、社会の方が自覚しろと迫っている。

暴力的にレイプされたわけでもないのに大げさだと、万が一でも思う人がいれば、
そんな人にこそこの映画の重さが届いてほしい。
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