ピオ

ファーストラヴのピオのネタバレレビュー・内容・結末

ファーストラヴ(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

正直全然期待してなかったけど、めちゃくちゃいい映画、というか、今の日本にこそ必要な映画だった。

ペドフィリアがいかにあらゆる女の人生を狂わせるか、いかに自覚も悪気もなく女にトラウマを与えているか、いかにふつうに見える男たちなのか、いかにそこらじゅうに当たり前に存在しているのか、なかなかうまく描かれていて、男性監督の作品なのにそこに言い訳がましい卑怯な表現もなく、ストレートに描かれていて感心した。
完璧とまでは思わないけど、邦画にしては結構拍手モノ。

ペド親から逃げて救いを求めた大人の男がまたペドで、「さすがにやべぇか」と手を止めた男に「いいよ私、慣れてるから」と言ってしまう少女の気持ち、地獄から救われるために少しマシな地獄を選び、自分の身体が対価となることを知っているからこそ差し出す気持ち、これ男には「なんだよそっちから誘ってんじゃん」と映るんだろうなと思うが、少しでも似たような経験がある女性には細かい描写がリアルすぎて、なんならPTSD注意くらいリアル。

そのペド男が今は結婚して子供もいるというシーンで、「息子さんですか」と聞いたら「娘です」と答えた時の北川景子のリアクションを深いため息だけにしたところも、死ぬほどリアルだ。
そう、こういうのため息しか出ないんだよ。

あと景子がショートカットなのも、過去のことで無意識に女性性を拒絶してる感じが出ていてよかった。

「北川景子のトラウマが軽すぎ」という男性の意見も見たが、あれは男性からの性的視線の恐ろしさを表しているわけで、軽いも何もない。
その視線を受けた時の恐ろしさを知らない、というかあなたたちがそういう「眼」で見ている時にこちら側がどう感じているか、想像もしないでいられる側の人間だからこその「トラウマが軽すぎ」という軽すぎる感想だと思う。

まあもちろん説明が足りなくないか?これで伝わるか?などとモヤモヤするシーンもあったが、日本映画でこれをやったことが素晴らしいと思う。
ペドフィリアの多い国で、ペドフィリアの異常性を、エロ描写としてでなく被害者側からちゃんと描いたものは初めてじゃないか?と思う。

演技力に関しては芳根京子が優勝していた。窪塚も、なぜ誠実な男性役で窪塚?と思ったが、窪塚の醸し出す時間が止まったような癒し効果と安心感、理解のある彼クンのポジションをやるのにほかにいなかったと思える人選だった。
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