いじめ自殺事件を追うドキュメンタリーディレクターの由宇⼦(瀧内公美)は、学習塾を経営する父(光石研)が犯したあることを知ることになる。
というのが本作のストーリー。
先日、「空白」という作品を観に行ったけど、本作の通底するテーマと似ているものがある。
「空白」はマスコミを外的なものとしてその悪しざまな描写がデフォルメされていたけれど、本作はマスコミ側の立場で加害者と被害者を描写している(側っていう言葉を使うと、「側ってなんだよ」と由宇⼦に怒られそうです)。
物語の設定と展開、キャラクター設定がめちゃくちゃ良い。
主人公・由宇⼦はドキュメンタリーを撮る身として常に中立であろうとする。「誰の味方にもなれません。でも、光を当てることはできる」などの台詞や所作で伝わってくる。でも、それがあらすじにある父親の犯したあることで揺らいでしまう。
ドキュメンタリーディレクターとしてたった1つの事件であらゆること、関係のない人たちまで影響を与えてしまうということを知っているからこその行動。
うわあ、そんなことするか……。それって大丈夫???と観ていて不安になってくるけど、いやでも仕方ないよなとも思えてくる。この辺の揺さぶってくる感じがなかなかキツい。
観ていてしんどいなと思う理由としてBGMなどの装飾が一切ないというのもあると思う。変にもっともらしいBGMが鳴ると冷めてしまうけど、終始、生活音のみで本編が構成されていて、これはドキュメンタリーか?と錯覚してしまった。劇中で起きていることがダイレクトに届くのが本当にしんどい。エンドロールも無音という徹底ぶりには驚きました。
身内や同僚にもカメラを向けるという由宇⼦の選択の残酷さもさることながら、最後に由宇⼦がカメラを向ける相手もなかなか酷だし、徹底してるなと思う。タイトルがマッチしすぎている。
上映時間が2時間半あるんですけど、まったく長く感じませんでした。とにかく引き込まれました。結末や真実を絶妙にぼかしている点も「空白」と同様にめちゃくちゃ好きなポイントでした。
めちゃくちゃ素晴らしい作品でした!!!
以下はメモ
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色気の多い役柄が多いように思う瀧内公美さんがあえて地味にしているのが良い。ちょっと疲れた感じも良い。地声が低いから安心感を与える。
由宇⼦「面白くなってきた」
外観は映さないでくださいと言われるのも撮っちゃう由宇⼦。
「誰の味方にもなれません。でも、光を当てることはできる」
「正論が最善とは限らないと思います」
普通の女の子に「普通に就職して普通に給料をもらいたい」と言わせてしまう現実。
「俺たちが繋いだもんが真実なんだよ」
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