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由宇子の天秤のseiのネタバレレビュー・内容・結末

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

自分のことで手一杯な人間が誰かを救うことなんて出来るはずなくて。由宇子は何のためにメイに優しくしたのだろうと考え込んでしまった。自分の父親がメイを妊娠させてしまったことに対する贖罪なのか、学生時代の自分と重なる部分があって同情してるのか、由宇子のその場しのぎの行動ばかり取る姿を見てると、メイへの優しさは本当にメイのことだけを思ってかけたものとは思えなかった。そんな独りよがりでエゴでしかない優しさでも喜んでいたメイをああいう形で傷付けたのは愚かだと思う。噂が本当であれ、慎重に触れるべきところを人の名前出して脅しかけるような聞き方するのは間違ってる。その間違いにさえ気付けてないから枕元に時計を置けるんだと思うし、あのタイミングでメイの父親に真実を話してしまうんだと思う。自己満足にも程がある。

仕事に関してもそう。中途半端なジャーナリズムで仕事してるから結局人を苦しめてしかいない。撮るなというとこを撮ったり、目を見て話を聞きたいと言って相手が倒れそうになるまで話を聞いたり。会社が求める映像でもなければ、遺族が求める映像でもなく、由宇子自身が思い描く筋書き通りの画を撮りたいだけなんだろうなと。事実を捻じ曲げてまでテレビ的な仕上がりにしたがる会社の方針が気に食わないのはわかるけど、自分勝手に動く割にはそれも空回りしてるから上と現場の間にいる先輩に迷惑かけてばかりで、そんな中途半端な感じで本当に正義といえるのか疑問に思った。結局由宇子にはソレっぽい正義とソレっぽい持論とソレっぽい感性しか持ち合わせてない気がする。

熱意あるドキュメンタリー監督が真実を追い求めて己の正義を貫き遺族を救う話かと思ってたけど、一人の未熟な人間が仕事もプライベートも自分本位で動きまわった挙句どっちも有耶無耶にして誰も救わない物語でした。主人公のことは好きになれなかったけど、長い上映時間にも関わらず飽きずに観れて面白かったです。由宇子役の女優さんの声のトーンや表情も凄く良かった〜。終わり方がアレなので暫くハァ、、、となりますが観てよかったです!
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