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アメリカの息子のKSのレビュー・感想・評価

アメリカの息子(2019年製作の映画)
4.5
事件現場ではなく、事件に巻き込まれた男性の母親という視点から、アメリカ社会の差別構造を描いた会話劇。

会話劇では基本的に人種差別の事を中心に話が進むが、その言外に女性蔑視の所も見えてくる。

本作の特徴は、舞台上での差別構造だけでなく、警察署だけが舞台となっており、事件現場や事件当事者を出さないことで、社会の“イメージ”や“ステレオタイプ”という差別を助長/誘発する事柄であり、そうした個人の認識による齟齬と絡まった様を1時間半通して描く事で、個人が見えている社会の範囲は限界がある事、観ているこちらも当事者になる。
この中にはヒップホップや映画などが作り出すイメージもテーマの一つとなっている。

警察の発言の微妙なニュアンスが彼らの立場をどう考えるか、力を行使できる者(本作では警察官)を対等な存在として見ていいのか、それらを踏まえ社会に対してどんな像を描くのかという自分の中にある社会像を浮き彫りにする作品だなと思った。

その上で本作を捉え直すと、母親はヒステリックなのではなく、1番立場が弱く発言権を軽視されているだけなのではないだろうかと思った。
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