てつこてつ

エルヴィスのてつこてつのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
3.0
非常に期待して鑑賞したが、少し残念。

さすがに自分の親よりもっと上の世代層(いわゆる“団塊の世代”?)に大いにウケたエルヴィス・プレスリーについては、それまで代表曲も知らなかったくらいだが、彼の死因はいまだに謎に包まれており、「もし、実はエルヴィスは亡くなってはおらず、世間から姿を隠しただけでそのまま生き続けていたら・・」をテーマに、ハーヴェィ・カイテルがメタボの中年オヤジと化したエルヴィス役を演じたロードムービーの秀作「グレイスランド」が自分にはまり、ベストアルバムも購入、挙げ句の果ては彼の豪邸をそのまま博物館にしたテネシー州・メンフィスまで訪ねたくらいの思い入れはある。

バズ・ラーマン監督らしい派手な演出やエンディングロールのこだわり、60年代のアメリカの色鮮やかなファッションも含めてキラキラとした映像美、そして、何よりもタイトルロールを演じたオースティン・バトラーのルックスやステージパフォーマンスは、役作りを丹念にして挑んだ努力が見受けられ好感。

2時間半を超える長尺だが、短いカット割りでどんどんストーリーが進んで行くのでテンポ感もいい。が、その反面、エルヴィスと彼を取り巻くキャラクターたちの描かれ方が軽すぎて、作品全体として、薄く浅い感がどうしても否めない。「ボヘミアン・ラプソディ」「ロケットマン」なんかと比較するとこの点が非常が残念。

トム・ハンクス演じるマネージャーとの確執をメインストーリーに持ってきている構成上、妻や父親、バンド仲間との絆の部分の描写が弱い。おそらく、上映時間の為に相当カットせざるを得ないシーンも多かったんだろうな。この構成で行くのなら「アマデウス」のモーツァルトとサリエリぐらいのドロドロとした確執がしっかり描かれていないとね。

にしても、あのトム・ハンクスの特殊メイク・・実在した人物を演じる上で似せるために仕方ないにしても、作り物感が満載で、ちと酷い。

エンディングの最後のピアノでの「Suspicious Mind」熱唱シーンは実際のフッテージなのか、それともオースティン・バトラーが演じていたのか定かではないが、魂が込められた歌唱で鳥肌が立った。
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