TaiRa

ミッドナイト・ファミリーのTaiRaのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・ファミリー(2019年製作の映画)
-
修羅の国メキシコは生きるの大変やなぁ。創作よりも劇的、映画的。

「メキシコシティの人口900万人に対し正式な救急車は45台」という冒頭のテロップから、とんでもねぇなって感じ。だから無許可の私営救急車が街中走り回ってる。毎夜、救急車出して稼働してる一家が撮影対象。17歳の長男やまだ小学生の末っ子が良いキャラ。救急要請を傍受しては即走り出す。アナウンスで道開ける口ぶりが「前のバイク早よ退けや!」とかで最高。同業者と競いながら現場に一番乗りしようとする場面は、ここ数年の映画で一番面白いカーチェイス場面かも。パトランプのビカビカも相まって『爆走デコトラ伝説』のようだった。ドキュメンタリーだがショットもめちゃくちゃキマってる。彼氏にぶん殴られた女の子がストレッチャーの上で血まみれの手を上げて(手だけフレームインする)腕のタトゥーを触るとこ、良い画過ぎてマジで?ってなる。あと色んな患者が出て来るが巧妙に顔見せない様にしているのも生々しかった。ヤク中の父親と赤ん坊のとこ、事故にあった親子の手だけの触れ合いなど。汚職警官たちによる締め付けなども当たり前の様に記録されている。完全にアウトな稼業を営む一方、長男の世界に対する目線、人生の報われなさは切実。だからといって聖人という訳でもなく、金の為に動いてる彼らの問題も見つめる。死に直面した長男がその度に彼女に電話している姿(実際は毎日電話してるのかもしれないが)は、そうやって精神の均衡を保っている様に見える。何とも言えない余韻。
TaiRa

TaiRa