Eyesworth

鬼火のEyesworthのレビュー・感想・評価

鬼火(1963年製作の映画)
4.7
【エリック・サティの音楽と甘美な死の香りを楽しむ作品】

1963年の古い作品だがフランス映画ならではの人物の詩的な言い回しが癖になり、今見ても鮮烈で面白い。エリック・サティ『グノシエンヌ』『ジムノペディ』の悲愴な旋律に乗せてアランが自殺するまでの最後の48時間が描かれる。ドラマチックで幸福な人生もスリリングで不幸にまみれた人生も結局それだけのことで大抵の人は諦め平凡に堕していく他ないが、アランにはそれが許せず「人生の卑しさを憎む」術として死ぬことを選んだのか。それにしてもこんなにも私物にまみれた病室に何不自由なく過保護に面倒を見てくれる人達が周りにいたらそりゃ完治しても病院から出たくなくなるだろう。解説に「愛は視線から生まれる」というルイ・マル監督が映画で好んで使う台詞がある、と書いてあった。アランを通して女性、友人、そして部屋の私物に視線を伸ばすと、どれも陳腐に見えてしまうのだが、そこにも彼の求めていた愛は潜んでいたのかもしれない。
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